「ステーキングは預けるだけで増える」。仮想通貨の運用方法として紹介されるとき、たいていこのフレーズが使われます。
たしかに間違いではありません。PoS(プルーフ・オブ・ステーク)系の銘柄を保有し、ネットワークの検証に参加すれば報酬がもらえる。銀行の利息よりはるかに高い年利が提示されることもあります。
ただ、「増える」部分だけを見て始めると、想定外のリスクに気づけません。ロックアップで売れない、報酬に税金がかかる、利率が下がる——こうした話は、メリットほど目立つところに書かれていません。
この記事ではステーキングのデメリットを5つ、ひとつずつ検証します。リスクを知った上で判断するための材料にしてください。
「放置で年利○%」のイメージが先行しすぎている
ステーキングが注目される背景には、銀行預金の金利との落差があります。メガバンクの普通預金金利が年0.3%前後の時代に、ステーキングでは年利3〜15%といった数字が提示されます。比べれば誰でも惹かれます。
しかし、この比較には前提のすり替えがあります。
銀行預金とステーキングは仕組みがまったく違う
銀行預金は預金保険制度によって1,000万円まで元本が保護されています。銀行が破綻しても、1,000万円とその利息は返ってきます。
ステーキングにはこの保護がありません。預けた仮想通貨の価値が半分になれば、報酬をもらっていても資産全体はマイナスです。年利5%で運用していても、価格が20%下がれば差し引きで15%の損失になります。
「年利が高い」と「安全に増える」はまったく別の話です。
ステーキングの仕組みやメリットについてはこちらにまとめています。

ステーキングのデメリット5つ
ここからは、ステーキングを始める前に知っておくべきデメリットを5つ取り上げます。どれも「やめた方がいい」という話ではなく、「知らないまま始めると困る」という話です。
ロックアップ中は売りたくても売れない
ステーキングの一部のサービスでは、預けた仮想通貨を一定期間引き出せない「ロックアップ」が設定されています。
海外取引所やDeFiプロトコルでは、ロックアップ期間が14日〜28日に設定されているケースが珍しくありません。その間に暴落が起きても、売却して損失を抑えることができません。
一方で、ロックアップがないからといってリスクがゼロになるわけではありません。売却できる状態であっても、価格変動リスクそのものは常に存在します。
ロックアップの有無は取引所選びで最初に確認すべきポイントです。
報酬をもらった時点で課税される
ステーキング報酬は雑所得として扱われ、総合課税の対象になります。所得税と住民税を合わせた最大税率は55%です。
しかも、課税タイミングは2回あります。
- 1回目:ステーキング報酬を受け取った時点(受取時の時価で課税)
- 2回目:その報酬を売却した時点(売却益に課税)
ここで厄介なのが、報酬受取後に価格が下がったケースです。
たとえば、時価10万円分のETHをステーキング報酬として受け取ったとします。この時点で10万円分の雑所得が発生します。その後ETHの価格が半分に下落すると、手元の価値は5万円。なのに税金は10万円分の所得に対してかかります。
なふと報酬を「もらっただけ」で売っていなくても、受け取り時点で課税対象になります。これを知らずに確定申告の時期に気づく人が少なくありません。
ステーキング報酬は「もらった瞬間」に税金が発生します。価格が下がっても、課税額は変わりません。
「年利10%」が半年後に3%になることもある
ステーキングの利率は固定ではありません。取引所やプロジェクトが提示する年利は、あくまで過去の実績値です。
利率が変動する最大の理由は、参加者の増減です。ステーキングに参加するバリデーターが増えれば、報酬は多くの人に分散されるため、一人あたりの取り分は小さくなります。
逆にバリデーターが減れば利率は上がりますが、それはネットワークへの信頼が下がっていることの裏返しでもあります。「利率が高い=安心」とは限りません。
なふと取引所の画面に表示される年利はリアルタイムで変わります。申し込んだ時点の年利がずっと続くわけではないので、定期的に確認する習慣が大切です。
スラッシングで預けた資産が減ることがある
スラッシングとは、ブロックチェーンの検証者(バリデーター)が不正やミスを犯した場合に、ステーキングされた資産の一部が没収される仕組みです。EthereumやPolkadotなどのPoSチェーンに実装されています。
ネットワークの安全性を維持するためのペナルティ制度であり、ダブルサイン(不正な二重署名)やオフライン状態の長期化がトリガーになります。
ただし、国内取引所のステーキングサービスを利用している場合、バリデーターの運用は取引所が行っています。ユーザーが直接スラッシングのペナルティを被る可能性は低いです。
なふと国内取引所を使っていれば、スラッシングを直接心配する必要はほぼありません。ただ、仕組みとして知っておくことに意味があります。
一方で、DeFiプロトコルを使って自分でバリデーターを運用する場合や、リキッドステーキングで間接的にバリデーターに委任する場合は話が変わります。委任先の運用ミスでスラッシングが発生すれば、自分の資産にも影響が及びます。
ビットコインではステーキングできない
ステーキングはPoS(プルーフ・オブ・ステーク)を採用しているブロックチェーンの仕組みです。ビットコインはPoW(プルーフ・オブ・ワーク)を採用しているため、ステーキングの対象外です。
国内取引所でステーキングに対応している銘柄は、ETH(イーサリアム)、SOL(ソラナ)、DOT(ポルカドット)、ADA(カルダノ)、XTZ(テゾス)、ATOM(コスモス)、ASTR(アスター)など、まだ限られています。
「仮想通貨を持っているからステーキングできる」と思って調べたら、自分が持っている銘柄は対象外だった。この「そもそもできない」問題は意外と多いです。
なふとビットコインやリップルなどPoW系の銘柄を中心に保有している方は、ステーキングではなくレンディング(貸暗号資産)を検討する方が現実的です。
ステーキングを始める前に、自分が保有している銘柄がPoS系かどうかを確認しましょう。
それでもステーキングが有効なケース
デメリットを5つ並べましたが、ステーキングそのものがダメな仕組みというわけではありません。リスクの性質を理解した上で、自分に合うかどうかを判断することが重要です。
向いている人と向いていない人
ポイントは「売るつもりがないPoS銘柄を持っているかどうか」です。もともと長期保有するつもりなら、持っているだけで報酬がもらえるステーキングは合理的な選択肢になります。
逆に、「年利が高いから」という理由だけでステーキング目的に銘柄を買うのはリスクが高いです。報酬よりも価格変動のほうがはるかに大きいので、銘柄選び自体が投資判断の本質になります。
ステーキングは「おまけの報酬」と考えるくらいがちょうどいい。報酬を目当てに銘柄を選ぶと、判断がゆがみます。
DeFiのステーキングに興味がある方はこちらも参考にしてください。

リスクを減らすための取引所選びのポイント
ステーキングのデメリットの中には、取引所の選び方で軽減できるものがあります。確認すべきポイントは4つです。
- ロックアップの有無(なしなら暴落時も売却できる)
- 対応銘柄の数(自分の保有銘柄が含まれているか)
- スラッシング発生時の対応(取引所負担か自己負担か)
- 税金計算ツールとの連携(CryptactやGtaxに対応しているか)
国内の主要取引所では、GMOコインやSBI VCトレードがステーキングサービスを提供しています。いずれもロックアップなしで、取引所側がバリデーターを運用するモデルです。
なふとステーキングに限らず、取引所選びは手数料やスプレッドだけでなく「何ができて何ができないか」を比較するのが大切です。
取引所のステーキング条件は頻繁に変わります。始める前に公式サイトで最新情報を確認してください。
取引所の比較はこちらにまとめています。

よくある質問
まとめ
ステーキングは「預けるだけで増える」と紹介されがちですが、見えにくいリスクがいくつもあります。
- ロックアップ中は暴落しても売れない場合がある
- 報酬は雑所得として課税され、最大税率55%
- 利率は固定ではなく、参加者が増えれば下がる
- スラッシングによる資産没収の仕組みがある
- PoS系銘柄しか対象にならず、ビットコインは不可
これらを理解した上で、それでも長期保有するPoS銘柄があるなら、ステーキングは合理的な選択肢です。「増やすため」ではなく「持っているなら活用する」くらいの感覚が、結果的にうまくいくことが多いです。
なふとデメリットを知ってから始めるのと知らずに始めるのでは、暴落が来たときの判断がまったく変わります。この記事が判断材料になれば幸いです。

