『ステーブルコインは「安定した仮想通貨」って本当?』
名前のとおりならそうですが、2022年にはUSTというステーブルコインが数日で約2.5兆円の時価総額を消滅させています。2023年にはUSDCが一晩で13%も値下がりしました。
「ステーブルコインだから安心」と思っていた人ほど、こういうニュースは不安ですよね。わかります。
この記事では、ステーブルコインの4つのリスクを実際の崩壊・ディペッグ事例とセットで解説します。種類ごとにリスクの度合いがまったく違うので、その見分け方と損をしない選び方まで書いています。
僕は「ステーブルコインだから安全」とは思っていません。ただ、リスクを知っていれば避けられる地雷がほとんどです。
ステーブルコインはなぜ「安定」していると言われるのか
ステーブルコインと一口に言っても、価格を安定させる仕組みは種類ごとにまったく違います。ここを知らないまま使うと、リスクの判断ができません。
大きく分けると3種類あり、それぞれ安定の裏付けが異なります。
| 種類 | 安定の仕組み | 代表的な銘柄 | リスクレベル |
|---|---|---|---|
| 法定通貨担保型 | 発行額と同等の米ドルや米国債を準備金として保有 | USDT・USDC | 低〜中 |
| 暗号資産担保型 | ETHなどの暗号資産を過剰担保で保有し、スマートコントラクトで管理 | DAI | 中 |
| アルゴリズム型 | 担保なし。アルゴリズムで供給量を調整して価格を維持 | UST(崩壊済み) | 高 |
法定通貨担保型は「裏に本物のドルがある」という点で比較的安心感があります。一方、アルゴリズム型は担保資産がなく、仕組みそのものが壊れると一気に崩壊します。
なふと種類の違いを知らないまま「ステーブルコインだから安心」と思い込むのが、一番危ないパターンです。
同じ「ステーブルコイン」でも、リスクの度合いは法定通貨担保型とアルゴリズム型で天と地ほど違います。
ステーブルコインの4つのリスクを事例と一緒に見る
ここから解説する4つのリスクは、すべて実際に起きた事例があります。「そんなことは起きないだろう」ではなく、「すでに起きた」という前提で読んでください。
ペッグが外れるリスク — 数日で2.5兆円のUSTが消えた話
ステーブルコインの最も致命的なリスクは、ペッグ(1ドル連動)が外れることです。
2022年5月、アルゴリズム型ステーブルコインのTerraUSD(UST)が崩壊しました。USTは姉妹トークンのLUNAとの間でアルゴリズムによる相互調整を行うことで1ドルを維持していましたが、大量の売りが入った瞬間にこの仕組みが逆回転を始めました。
USTが売られるとLUNAが大量発行され、LUNAの価格が下がり、さらにUSTへの信頼が落ちて売りが加速する。いわゆる「デススパイラル」です。
結果として、USTの時価総額約200億ドル(約2.5兆円)が数日で消滅。LUNAも97%以上下落し、ほぼ無価値になりました。
アルゴリズム型ステーブルコインは、仕組みが壊れた瞬間に価値がゼロに向かいます。UST崩壊はその証明です。
USDTの準備金は本当に足りているのか
USDT(テザー)は市場シェアNo.1のステーブルコインで、時価総額は1,800億ドル超(2026年時点)。しかし、その裏付け資産の透明性には長年疑問が付きまとっています。
2019年の法廷書類で、Tether社の法務顧問は「準備金のうち現金および現金同等物は約74%」と証言しました。残りの約26%はコマーシャルペーパーなど流動性の低い資産だったのです。
「1USDT = 1ドル分の裏付けがある」という前提で使っている人がほとんどですが、その中身を確認したことがある人はどれくらいいるでしょうか。
現在、Tether社は四半期ごとにアテステーション(第三者証明)を公開しており、準備金の構成は改善されています。ただし、これは正式な監査ではありません。USDCの発行元であるCircle社が月次で大手会計事務所による第三者証明を受けているのとは、透明性に差があります。
なふとUSDTは市場シェアNo.1ですが、「1USDT = 1ドル」を第三者が完全に検証した監査報告書はまだ出ていません。これは事実として知っておくべきです。
準備金の透明性は「信頼」の問題です。信頼が揺らいだ瞬間に、法定通貨担保型でもディペッグは起きえます。
発行体に関わる銀行が破綻したらどうなるか
「法定通貨担保型なら安全」と思いがちですが、その裏にある金融機関が潰れたらどうなるのか。この問いに現実が答えを出したのが、2023年3月のUSDCディペッグ事件です。
USDC発行元のCircle社は、準備金の一部をシリコンバレー銀行(SVB)に預けていました。SVBが経営破綻したことで、Circleの約33億ドルの資金が一時的に引き出せなくなり、市場にパニックが広がりました。
USDCの価格は一時0.87ドルまで下落。約13%のディペッグです。
結果的にはアメリカ政府がSVBの預金を全額保護する方針を発表し、USDCは数日で1ドルに回復しました。しかし、これは「たまたま政府が介入した」から助かった話です。
ステーブルコインを取引所に預けている場合、取引所が破綻するリスクもあります。日本の法制度上どこまで保護されるのかについては、こちらの記事で解説しています。

法規制が変わればルールごと変わる
ステーブルコインは今後、各国の規制次第で使い勝手が大きく変わる可能性があります。
日本ではすでに動きが始まっています。2023年6月、改正資金決済法が施行され、ステーブルコインは「電子決済手段」として法的に位置づけられました。発行できるのは銀行・資金移動業者・信託会社のみに限定され、個人やスタートアップが自由に発行できる時代ではなくなりました。
アメリカでも2025年以降、ステーブルコイン専用の規制法案が進行中です。発行要件の厳格化や準備金の監査義務化が議論されており、規制が強化されればUSDTのような海外発行のステーブルコインが使いにくくなる可能性もあります。
逆に言えば、規制が整うことで「ちゃんとした」ステーブルコインが選びやすくなるという見方もできます。ただし、現時点ではルールが確定しておらず、今使っているステーブルコインの取り扱いが将来変わるリスクは残っています。
法規制は「リスク」であると同時に「整備」でもあります。ただし、ルールが変わる過渡期にいることは認識しておくべきです。
「ビットコインより安全でしょ?」への反論
ステーブルコインは値動きが小さいから安全。ビットコインは暴落するから危険。こう考える人は多いですが、それは「安全」の定義が偏っています。
ビットコインは値動きが激しいですが、「発行体」が存在しないため、第三者の経営破綻で価値がゼロになるリスクはありません。一方、ステーブルコインは値動きが小さい代わりに、発行体や準備金に依存するカウンターパーティーリスクを抱えています。
つまり、「値動きリスク」と「カウンターパーティーリスク」は種類が違うのです。どちらが安全かは、「何のリスクを気にしているか」で答えが変わります。
なふと「安定している=安全」ではありません。ステーブルコインとビットコインでは、リスクの種類そのものが違います。
DeFiでステーブルコインを運用する場合は、さらにスマートコントラクトやプロトコル側のリスクも加わります。

ステーブルコインで損をしないための3つの選び方
リスクを理解した上で、ステーブルコインを使うときに最低限意識しておくべきことを3つにまとめました。
- アルゴリズム型は避けて、法定通貨担保型を基本にする。UST崩壊の教訓は「担保のないステーブルコインは壊れる」ということ
- USDT・USDCなど複数に分散する。1銘柄に全額を置くと、その発行体に問題が起きたとき全額が影響を受ける
- 国内取引所で購入できるものを選ぶ。日本の規制対象であれば、発行体の監査体制や準備金の管理に一定の基準が設けられている
なふとDeFiやレンディングでステーブルコインを運用するなら、コイン自体のリスクに加えてプラットフォーム側のリスクも必ず確認してください。
レンディングでステーブルコインを貸し出す場合のリスクについては、こちらで詳しく解説しています。

ステーブルコインのリスクは「知っていれば避けられる」ものがほとんどです。種類を選ぶ・分散する・国内取引所を使う。この3つだけでも大きく違います。
よくある質問
まとめ
ステーブルコインは「安定している」という名前のイメージだけで判断すると、足元をすくわれます。
- ステーブルコインの安定メカニズムは種類ごとにまったく違う
- 4つのリスクがある。ディペッグ・準備金の不透明さ・カウンターパーティーリスク・規制変更
- UST崩壊で約2.5兆円が消滅し、USDCも一時13%下落した。すべて実際に起きた事例
- ビットコインとは「安全性」の種類が違う。値動きリスク vs 発行体リスク
- 法定通貨担保型を基本にし、複数銘柄に分散して、国内取引所を使う。これが最低限の対策
なふとステーブルコインは仮想通貨の中でもリスクが低い部類ですが、「ゼロ」ではありません。種類を見極めることが何より大事です。
仮想通貨のリスクを網羅的に把握したい方は、ステーキングのリスクについてもチェックしてみてください。


