「今の仕事のままでいいのか分からない」「ITに行きたいけど、未経験だし何から動けばいいの?」
この記事は、そういう状態の20代に向けて書いています。求人サイトを開いては閉じる、を繰り返してる時期って本当にしんどいですよね。
実は、IT技術職の求人倍率は全職種平均の2倍を超える水準が続いています。売り手市場なんです。それなのに、未経験からのIT転職で後悔する人は絶えません。原因は能力でも運でもなく、動く順番です。
結論から言うと、いきなり求人サイトを見るのが一番危ない動き方です。順番を間違えると、求人を100件見ても選べないか、選んではいけない求人を選んでしまいます。
応募する前に整理すべきことは5つだけ。この記事はその5つを、数字と実体験で順番に埋めていきます。
きついのは「会社」なのか「職種」なのか
転職を考え始めた理由を、まず1回だけ分解してください。
- 会社がきつい(人間関係、労働時間、評価制度)
- 職種が合っていない(仕事内容そのものが向いていない)
この2つは対処法がまったく違います。会社の問題なら、同じ職種のまま会社を変えれば解決します。職種の問題なら、未経験転職という大きめの選択肢が正解になり得ます。
怖いのは、ここを誤診したまま動いた場合です。「人間関係がきつい」が本当の理由なのに職種を変えると、新しい職場でも人間関係の問題はそのまま持ち越されます。年収を下げてITに移ったのに、辞めたくなった理由が消えていない。これが未経験転職の失敗パターンの中でも一番もったいないやつです。
なふとここを飛ばして求人を見始めると、100件見ても1件も選べないという状態になりがちです。最初の10分がいちばん効きます。
求人を見るのは、辞めたい理由を3つ書き出してからで遅くありません。
「未経験OK」には2種類あることを知る
未経験向けIT求人には、はっきり2種類あります。「育てる気がある未経験OK」と「誰でもいい未経験OK」です。
求人票は会社の「外向きの顔」です。一番よく見せたい場所でこの状態なら、中はもっと厳しいと考えて差し支えありません。
未経験可求人の7〜8割はSES系という現実
見分け方の前に、市場の構造を1つだけ知っておいてください。未経験OKのエンジニア求人は、7〜8割がSES系という調査があります。
SESは、自社で開発するのではなく、エンジニアを客先に常駐させて働かせる契約形態です。誤解してほしくないのですが、SESそのものは悪ではありません。未経験者に最初の実務経験を作る入口として機能している面は確かにあります。
問題はSESかどうかではなく、育てる気があるかどうかです。同じSESでも、研修が具体的で帰属先のフォローがある会社と、集めた人を右から左に常駐させるだけの会社では、3年後のキャリアがまったく違います。だから見るべきは「SESか否か」ではなく、さっきの比較の左右どちらに当てはまるか、です。
初年度の年収はどれくらい下がるのか
転職記事があまり書きたがらない数字も、先に出しておきます。
| 時期 | 年収の目安 |
|---|---|
| 初年度(未経験入社) | 300〜350万円が中心。完全未経験だと280万円スタートもある |
| 3年後 | 350〜500万円程度まで戻すケースが多い(会社の育成体制とスキル習得速度に左右される) |
| 首都圏の大手・外資系 | 初年度から400万円超のケースもある |
前職の給料によっては、一度下がります。ここを曖昧にしたまま転職すると、入社後に「聞いてない」となって、学ぶ前に心が折れます。
逆に言えば、下がる期間は設計できるということです。「初年度は下がる。3年で戻して超える」と最初から知っていれば、それは失敗ではなくて計画の一部です。
比較の右側に2つ以上当てはまる求人は、見た瞬間に閉じて構いません。
スクールか独学か、それとも第三の道か
未経験ITの定番の悩みが「スクールに行くべきか、独学でいけるか」です。
正直に言うと、この二択はもう古くなりつつあります。
挫折した人の9割は、能力の問題ではなかった
プログラミング学習の調査では、約9割が挫折を経験し、その多くは学習開始から3ヶ月以内に脱落しています。挫折理由の上位は毎回同じで、「わからないことを聞ける相手がいない」「エラーが解決できない」。
つまり、挫折の正体は才能でも根性でもなく、孤独です。エラーで3日止まる、誰にも聞けない、フェードアウトする。この構造が何年も変わらずに、9割という数字を作ってきました。
AIに聞きながら作る学習は何が違うのか
生成AIの登場で、この構造が壊れました。2022年のGitHubの実験では、AI補助を使った開発者はそうでない開発者よりタスク完了が55%速かったと報告されています(熟練者ではむしろ効率が落ちたという2025年の研究もあり、効果はタスクと経験値によります)。ただ、初学者にとって大事なのは速度ではありません。挫折理由の1位だった「詰まったまま誰にも聞けない時間」が、ほぼ消えることです。
なふと僕自身、いま自分のコンテンツ事業の運用をAIに任せる仕組みを自作して動かしていますが、作っている間に「誰にも聞けなくて止まる」時間はほぼゼロでした。エラーも設計の迷いも、その場でAIに聞いて10分後には先に進んでいます。数年前に挫折した身としては、別のゲームになったという感覚です。
過去にプログラミングで挫折した経験がある人ほど、この変化は大きいはずです。あなたの能力の問題ではなく、「聞ける相手がいない」という環境の問題だった可能性が高いからです。
スクールを検討するなら「転職保証」の条件を先に見る
それでも短期集中や強制力が欲しい人には、スクールが合う場合もあります。その場合は申し込む前に、転職保証の条件を必ず確認してください。年齢・地域・紹介される求人の種類です。
保証の対象外だった、紹介されるのはさっきの「右側」の求人ばかりだった、というケースは珍しくありません。何十万円の判断なので、ここだけは契約前に文面で確認する価値があります。
「AIが使える」は転職市場で武器になるのか
なります。ただし条件付きです。
「ChatGPTが使えます」はもう差にならない
「ChatGPTが使えます」は、数年前の「Excelが使えます」と同じ道をたどっています。ツールに触れること自体は、もう誰でもできるからです。
面接で評価されるのは、AIで何を作ったか、何の作業をどれだけ短縮したか。つまり成果物です。
逆に言えば、小さくても成果物が1個あるだけで、未経験者の中では一気に別枠になれます。学習の途中でも、作ったものは必ず記録しておいてください。
面接で「AIを使わせてもらえますか」と聞いていい
もう1つ、2026年ならではの企業選びの軸を足しておきます。その会社は業務でAIを使わせてくれるのかです。
開発補助AIの導入状況は、会社によって驚くほど差があります。AIを使える環境で3年働くのと、禁止された環境で3年働くのとでは、身につく速度が変わります。研修・年収・勤務地と同じ列に「AI活用環境」を並べて、面接で普通に質問していい時代です。答えに詰まる会社は、それ自体が判断材料になります。
ツールが使えることではなく、作ったものと、作らせてもらえる環境。この2つがAI時代の武器です。
無料相談は「応募する場所」ではなく「情報を取る場所」として使う
最後に、転職エージェントや無料相談の使い方です。
「相談に行ったら無理に応募させられそう」という警戒心を持っている人は多いと思います。その警戒は正しいです。だからこそ、使い方を先に決めてから行きます。
- 行く前に「今日は応募しない」と決めておく
- 聞くことをメモして行く(自分の経歴で狙える求人のレンジ、未経験ITの実際の年収相場、避けるべき会社の特徴)
- 相談と応募は別の日でいい
無料相談の価値は、求人を紹介してもらうことより、自分では手に入らない市場の情報を取れることにあります。この記事で挙げた年収相場も求人の見分け方も、担当者に「実際どうですか」とぶつけて答え合わせができます。1社だけでなく2〜3社の話を聞くと、情報の偏りも消えます。
未経験IT向けの転職支援サービスは、多くが20代限定・対象地域限定(首都圏・関西圏など)です。対象外の年齢・地域だと登録しても面談まで進めないことがあるので、申し込む前に自分が対象かを確認してください。
エージェントは「決めてもらう場所」ではなく「情報を取る場所」。主導権はこちらに置いたまま使えます。
よくある質問
順番を間違えなければ、未経験ITは今むしろ追い風
- きついのは会社か職種かを分解する(3つ書き出す)
- 「未経験OK」の2種類を見分ける
- 学習はAI併走という第三の道を前提に考える
- 「AIで作った成果物」を1個持つ。企業選びにはAI活用環境の軸を足す
- 無料相談は情報収集として、対象条件を確認してから使う
経済産業省の試算では、IT人材は2030年に最大で79万人不足すると言われています。人が足りない側の市場に、学習コストが激減したタイミングで入れる。焦って求人に飛びつく必要はありませんが、整理さえ済めば、動くのに悪い時期ではありません。

