仮想通貨のレンディングは、持っている通貨を取引所に貸し出して利息を受け取る仕組みです。国内大手のコインチェックで年利最大5%、GMOコインで最大10%。銀行の定期預金が年0.01%なので、文字通り桁が違います。
ただ、2022年にはレンディング大手のCelsiusとBlockFiが相次いで破綻し、数十億ドル規模の資産が凍結されました。「安全に増やせる」と紹介されていたサービスで、実際に資産が消えた人がいます。
この記事ではレンディングの危険性を、海外の破綻事例・法的な仕組み・国内取引所の限界という3つの角度からフラットに評価して、最終的に「やるべきか・やめるべきか」を判断できるようにします。
「年利5%で放置するだけ」はどこまで本当か
レンディングの仕組み自体はシンプルです。自分が持っている仮想通貨を取引所やレンディング事業者に一定期間貸し出して、満期になったら利息をつけて返してもらう。「やることがない」のがメリットだと言われる理由は、本当にこれだけの仕組みだからです。
ただ、ここに一つだけ致命的な前提があります。
レンディングは「預金」ではなく「貸付」
銀行に預けたお金は、預金保険制度によって1,000万円まで保護されています。銀行が潰れても、この範囲なら戻ってきます。
レンディングにはこの保護がありません。取引所との間で結ぶのは消費貸借契約という民法上の契約で、平たく言えば「あなたが取引所にお金を貸す」契約です。担保はないし、返還の保証もない。
つまり「銀行預金のクリプト版」ではなく、「無担保で企業にお金を貸している」状態です。定期預金と並べて語られることが多いですが、リスクの性質がまったく違います。
年利5%の裏側にあるのは「元本が返ってこないかもしれないリスク」であり、それを知った上で判断するのが前提です。
預けた仮想通貨がどこで運用されているか知っていますか
年利5%をどうやって生み出しているのか。ここを説明してくれる記事は、意外と少ないです。
海外のレンディング業者は、ユーザーから預かった資産をDeFiプロトコルに投入したり、機関投資家に再貸出したり、自社でトレードに使ったりしていました。CelsiusやBlockFiが高い利回りを出せたのは、裏側で高リスクな運用をしていたからです。
国内の取引所はどうか。実は、預けた仮想通貨の具体的な運用先を開示している取引所はほとんどありません。「安全に運用しています」とは書いてあっても、何に使っているかまでは見えない。
なふと自分のお金を貸すのに、相手が何に使うか分からない。冷静に考えるとかなり怖い状態です。
レンディングで実際に資産が消えた事例
「危険性がある」と言われてもピンとこないかもしれません。しかし、仮想通貨レンディングの世界では実際に大規模な破綻が起きています。どちらも「信頼できる」と紹介されていた業者です。
Celsiusの出金停止 — 170万人の資産が一夜で凍結された
2022年6月12日、仮想通貨レンディング大手のCelsiusが突然、すべての出金・送金・スワップ機能を停止しました。
利用者は約170万人。預かり資産は推定120億ドル以上(当時のレートで約1.6兆円)。前日まで普通に使えていたサービスが、一夜で止まりました。
原因は、預かった資産を高リスクなDeFi運用に回していたことと、市場の急落で資金繰りが悪化したことです。ユーザーに年利17%以上を約束しながら、裏側では持続不可能な運用を続けていました。
BlockFiはFTXの巻き添えで破産した
Celsiusの半年後、2022年11月28日にBlockFiが米連邦破産法11条の適用を申請しました。
BlockFiはFTXおよびその関連会社Alameda Researchに約12億ドルのエクスポージャー(債権・貸付)を持っていました。FTXが破綻してこの資金が回収不能になり、そのまま連鎖倒産した形です。
弁済が始まったのは2024年の夏。破綻から1年半以上が経過してからです。それでも全額ではなく、資産の一部がコインベース経由で返却されたにすぎません。
「ここなら大丈夫」は通用しなかった
CelsiusもBlockFiも、破綻前は「信頼できるレンディング業者」として多くのメディアで推薦されていました。レビュー記事も、おすすめランキングもありました。
それでも潰れた。しかも、利用者がリスクを感じ始めたときにはもう手遅れでした。出金停止が発表された時点で、資産はすでに動かせなくなっていたからです。
「潰れるわけがない」と思って預けた人が被害者になった。これがレンディングの危険性の実態です。
仮想通貨の歴史的な破綻事例についてはこちらにまとめています。
国内取引所のレンディングなら安全なのか
CelsiusもBlockFiも海外の業者です。「日本の取引所なら大丈夫でしょ」と考える人は多いと思います。確かに、国内と海外では規制の厳しさがまったく違います。ただ、規制があるからといってリスクがゼロになるわけではありません。
金融庁の登録があるだけで「保証」にはならない
コインチェック、GMOコイン、ビットバンクなど、国内の主要取引所は金融庁に暗号資産交換業者として登録されています。分別管理(顧客資産と自社資産を分ける義務)があるため、海外の無規制業者よりは安全性が高い。
ただし、レンディングに預けた資産は「分別管理」の対象外です。レンディングは消費貸借契約であり、預けた時点で所有権は取引所側に移ります。つまり、取引所が破綻した場合、レンディング中の資産は一般債権として扱われる可能性があります。
銀行の預金保険のように「ここまでは必ず返る」という制度はありません。
なふと取引所の口座に置いてある資産は分別管理の対象ですが、レンディングに出した瞬間にその保護は外れます。ここを理解していない人は意外と多いです。
途中解約できないのは国内でも同じ
国内取引所のレンディングにも、途中解約に関する制約があります。
コインチェックの「貸暗号資産」は、365日プランで年利最大5%。ただし、原則として途中解約はできません。GMOコインの「貸暗号資産ベーシック」は年利1.3〜10%で、途中解約すると貸借料が受け取れない場合があります。
ビットコインが1日で20%下落するような場面は、過去に何度も起きています。そのとき「売りたい」と思っても、レンディング中の資産は動かせません。含み損が膨らんでいくのを見ながら、満期まで待つしかない。
途中で逃げられないのは海外業者だけの問題ではなく、国内取引所のレンディングでも同じです。
なぜ銀行の500倍の金利がつくのか、考えたことはあるか
銀行の定期預金が年0.01%のときに、レンディングで年5%。差は500倍です。
リターンが大きいということは、どこかでそれに見合うリスクを取っているということです。銀行は預金保険があり、厳格な自己資本規制があり、運用先も制限されている。レンディングにはそのどれもない。
年利5%は「おいしい」のではなく「その分のリスクを負っている」だけです。もしこれが低リスクで本当に年利5%なら、機関投資家がすでに全額預けているはずで、個人に回ってくる枠はなくなっています。
なふと「リスクなしで年利5%」という言い方をしている記事があったら、それは危険性を正しく伝えていないと思います。
DeFi系のレンディング(AaveやCompoundなど)にはスマートコントラクトリスクも加わります。興味がある方は以下の記事も参考にしてください。

レンディングとステーキングはどっちがリスクが低いか
仮想通貨を「持っているだけで増やす」方法として、レンディングとよく比較されるのがステーキングです。どちらも「預けて利回りを得る」点では似ていますが、仕組みが違うのでリスクの質も異なります。
壊れ方が違うから、怖がるポイントも違う
レンディングは、自分の資産を第三者(取引所や事業者)に貸す仕組みです。リスクの本体は「貸した相手が返せなくなること」。つまり、相手方の信用リスクです。
ステーキングは、ブロックチェーンのネットワーク維持に参加する仕組みです。資産はプロトコルにロックされますが、第三者に「貸す」わけではありません。リスクの本体は、スラッシング(不正行為に対するペナルティ)や、ロック期間中の価格変動です。
レンディングは「相手を信用する」リスク。ステーキングは「仕組みを信用する」リスク。どちらが安全かは一概に言えませんが、レンディングの方が「人間の判断ミスや不正で壊れる」リスクが大きいのは確かです。
「預けて増やす」は同じでも、壊れ方が違う。自分がどちらのリスクを許容できるかで選ぶべきです。
ステーキングのデメリットについて詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。

レンディングの危険性についてよくある質問
仮想通貨レンディングの危険性まとめ
レンディングは「放置で増える」という魅力がある一方で、競合記事ではあまり触れられない危険性を抱えています。改めて要点を振り返ります。
- レンディングは「預金」ではなく「無担保の貸付」。元本保証も預金保険もない
- CelsiusとBlockFiの破綻で、実際に数十億ドル規模の資産が消えた
- 国内取引所でも途中解約は原則不可。暴落中に逃げられないリスクがある
- 金融庁登録があっても、レンディング資産は分別管理の対象外になる
- ステーキングとはリスクの質が異なる。レンディングは「相手の信用」に依存する
- 年利5%にはそれ相応のリスクがある。「おいしい話」ではなく「リスクの対価」
ここまで読んで「それでもレンディングをやりたい」と思った人に向けて、最後に判断基準を置いておきます。
レンディングは仮想通貨を活用する選択肢の一つですが、仕組みを理解しないまま始めるのは危険です。まずは安全な取引所を選ぶところから始めてください。

なふとレンディングの危険性を調べている時点で、判断力はあると思います。焦らず、自分のリスク許容度と照らし合わせて決めてください。


