仮想通貨を保有したまま亡くなる人が増えています。国税庁は2019年に暗号資産の相続税評価方法を明確化しましたが、「で、実際いくら取られるの?」という部分はまだわかりにくいですよね。
この記事では仮想通貨の評価額が300万円だったケースを例に、相続税がいくらかかるかを実際に計算しました。手続きの流れや必要書類、やりがちな失敗まで1記事で把握できるようにしています。
結論から言うと、仮想通貨300万円だけなら相続税はゼロになるケースが多いです。ただし他の財産と合算すると話が変わります。
仮想通貨の相続税を評価額300万円で計算した結果
相続税の計算は「遺産の総額」から始まります。仮想通貨だけを単体で課税するわけではなく、不動産・預貯金・株式など他の財産と全部合算してから計算します。
仮想通貨300万円だけなら税金はゼロになる
相続税には「基礎控除」があります。計算式は3,000万円+600万円×法定相続人の数。たとえば配偶者と子ども1人なら基礎控除は4,200万円です。
仮想通貨の評価額が300万円で、他に大きな財産がなければ、遺産総額は基礎控除の範囲内に収まります。つまり相続税は0円。申告すら不要です。
なふと「仮想通貨を持っていたけど大した金額じゃない」という場合は、税金より手続きのほうが大変です。そこは後半で解説します。
他の財産と合算すると話が変わる
問題は、故人に不動産や預貯金がある場合です。自宅の土地建物で3,000万円、預貯金で1,500万円、仮想通貨300万円なら遺産総額は4,800万円。配偶者+子ども1人だと基礎控除の4,200万円を超えます。
超過分600万円に対する相続税率は10%。つまり相続税は60万円です(配偶者の税額軽減を使わない場合)。
- 遺産総額4,800万円(不動産3,000万+預貯金1,500万+仮想通貨300万)
- 基礎控除4,200万円(3,000万+600万×2人)
- 課税対象額600万円 → 税率10% → 相続税60万円
- 配偶者の税額軽減(1億6,000万円まで非課税)を使えば配偶者負担分はゼロ
「相続開始日の時価」で評価するルール
仮想通貨の評価額は被相続人が亡くなった日の時価で計算します。国税庁の「暗号資産の評価方法」に従い、取引所で公表されている最終取引価格を使います。
複数の取引所で取引していた場合は、各取引所の最終価格を使って銘柄ごとに評価します。DEXやウォレットに保管してあるトークンも時価評価の対象です。
評価日は「死亡日」であって「相続手続き完了日」ではありません。その間に暴落しても暴騰しても、死亡日の価格で固定されます。
相続後に売却して利益が出た場合、そこには別途「所得税」がかかります。相続税と所得税の二重課税については注意が必要です。
仮想通貨の税金計算について詳しくはこちらの記事で解説しています。

仮想通貨を相続するとき、最初にやることと全体の流れ
相続税がいくらかを把握したら、次は実際の手続きです。相続税の申告期限は死亡日から10ヶ月以内。この間に取引所の特定、書類提出、評価額の確認をすべて終わらせる必要があります。
故人がどの取引所を使っていたか特定する
最初のステップは取引所の特定です。故人のメールを「Coincheck」「bitFlyer」「GMOコイン」などで検索すれば、口座開設時の確認メールが見つかることが多いです。
スマホのアプリ一覧を確認するのも有効です。銀行口座の入出金明細に「暗号資産交換業者」への振込履歴があれば、そこから取引所を逆引きできます。
海外取引所(BinanceやBybit)を使っていた場合、日本語のサポートがないケースもあります。英語でのやり取りが必要になることを想定しておいてください。
取引所に相続が発生したことを連絡する
取引所が特定できたら、カスタマーサポートに「口座名義人が死亡した」ことを連絡します。連絡後、口座は凍結されます。売買も出金もできなくなりますが、これは資産保全のための正常な対応です。
この段階で「代表相続人」を決めておくとスムーズです。取引所とのやり取りを一人に集約できるので、書類の行き違いが防げます。
なふと凍結されても資産が消えるわけではありません。書類が揃えば解除されますので、慌てずに進めてください。
必要書類を提出して口座の凍結を解除する
取引所から必要書類の案内が届きます。取引所によって多少異なりますが、共通して求められるのは以下の書類です。
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで連続したもの)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 代表相続人の本人確認書類
書類提出から凍結解除まで、だいたい2週間〜1ヶ月かかります。取引所によっては追加書類を求められることもあるので、余裕を持って動いてください。
凍結解除後に取引履歴をダウンロードしておくと、確定申告のときに楽です。
Coincheckの取引履歴ダウンロード方法はこちらで解説しています。

仮想通貨の相続でやりがちな失敗3つ
相続手続き自体は難しくありませんが、知らないとやってしまうミスがあります。特に以下の3つは取り返しがつかないケースもあるので先に把握しておいてください。
スマホを初期化してパスワードを消してしまう
故人のスマホを契約解除したり、初期化したりすると、二段階認証アプリ(Google Authenticator等)のデータが消えます。これが消えると取引所へのログインが困難になります。
ただし、パスワードがわからなくても取引所に直接連絡すれば相続手続きは進められます。本人確認は戸籍謄本など公的書類で行うため、ログインできる必要はありません。
スマホの解約や初期化は、取引所の特定が完了するまで絶対にしないでください。
相続人が勝手に売却して所得税も発生する
凍結解除後に仮想通貨を売却した場合、売却益に対して所得税(最大55%)がかかります。相続税とは別の税金です。
たとえば相続時の評価額が300万円で、売却時に500万円になっていたら、差額200万円に対して所得税が課されます。「相続税を払ったのに、また税金?」と感じるかもしれませんが、これは制度上そうなっています。
なふとすぐに売却する予定がないなら、そのまま保有しておくのも選択肢です。売らなければ所得税は発生しません。
10ヶ月の期限を過ぎて追徴課税になる
相続税の申告期限を過ぎると、延滞税と無申告加算税が加算されます。無申告加算税は納付すべき税額の15〜20%。数十万円の追加負担になることもあります。
「仮想通貨の存在に気づかなかった」は免除の理由になりません。故人の財産調査は相続人の責任とされています。
生前にやっておくと家族が助かる準備
ここまでは「亡くなった後」の話でしたが、そもそも事前に準備しておけば、家族の負担は大幅に減ります。
パスワードと取引所リストを書き残す
使っている取引所名と口座情報を、紙のメモかパスワード管理アプリの共有機能で家族に伝えておくだけで状況は大きく変わります。
「取引所がわからない」状態からのスタートは、相続人にとって最もストレスが大きい部分です。一覧さえあれば、あとは書類を揃えて連絡するだけで済みます。
なふと僕は1Passwordの「緊急キット」を家族に渡しています。紙のメモでもノートアプリの共有でも、何でもいいので「どこに預けているか」だけは伝えておくのがおすすめです。
生前贈与で相続税を減らせるか
年間110万円までの贈与は非課税です。数年かけて少しずつ家族に渡しておけば、相続時の課税対象額を減らせます。
ただし相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されるルール(2024年改正で3年→7年に延長)があるため、早めに始める必要があります。
「仮想通貨を家族に渡す」こと自体にも贈与税がかかる場合があります。詳しい計算方法は以下の記事で解説しています。

よくある質問
まとめ
仮想通貨の相続は「税金の計算」と「取引所との手続き」の2つを並行して進める必要があります。どちらも10ヶ月の期限内に終わらせないといけないので、早めに動くのが鉄則です。
- 仮想通貨300万円だけなら基礎控除内で相続税ゼロ(他の財産と合算で変わる)
- 評価額は「死亡日の時価」で固定される
- 手続きの第一歩は取引所の特定→連絡→書類提出
- スマホの初期化は取引所特定前にやらない
- 売却益には相続税とは別に所得税がかかる
- 生前に取引所リストとパスワードを共有しておくだけで家族の負担は激減する
「仮想通貨を持ったまま死ぬ」可能性は誰にでもあります。取引所の一覧を家族に伝えることが、今日からできる最大の相続対策です。
なふと仮想通貨の相続は面倒に見えますが、一つずつ進めれば難しくはありません。この記事がお役に立てれば嬉しいです。

