仮想通貨を少しずつ利確すると税金はどうなる?年収別シミュレーションで検証した

仮想通貨の含み益が膨らんできた時、多くの人が考えるのが「一気に売ると税金がヤバいから、少しずつ利確しよう」という作戦です。

直感的にはかなり賢い方法に思えますが、実際にどれくらい税金が変わるのかを具体的に計算したことがある人は少ないのではないでしょうか。

この記事では、年収別に「一括利確」と「分割利確」で税金がいくら変わるのかをシミュレーションしました。結論を先に言うと、分割利確は確かに有効ですが、万能ではありません。効果の大きさは年収と利確額の組み合わせによって大きく変わります。

なふと

僕も含み益が出た時に「少しずつ売った方がいいのかな」と迷ったことがあります。その時に実際に計算してみたら、思ったほど得じゃないケースもあったんですよね。

目次

「少しずつ利確すれば税金が減る」は本当か

まず、なぜ「少しずつ利確すると税金が減る」と言われるのか、その仕組みを簡単に理解しておきましょう。

仮想通貨の税金は「雑所得」で累進課税

仮想通貨の利益は「雑所得」に分類され、給与所得などと合算して総合課税されます。日本の所得税は累進課税制度を採用しており、所得が増えるほど税率が上がる仕組みです。

課税所得 所得税率 住民税を含む実質税率
〜195万円 5% 約15%
195〜330万円 10% 約20%
330〜695万円 20% 約30%
695〜900万円 23% 約33%
900〜1,800万円 33% 約43%
1,800〜4,000万円 40% 約50%
4,000万円超 45% 約55%

ここで重要なのは、税率は所得全体ではなく「超えた部分」にかかるという点です。年収が高い人ほど、仮想通貨の利益が積み上がった時に高い税率の段に突入しやすくなります。

「少しずつ利確」が節税になる理由は税率の階段にある

たとえば課税所得300万円の人が、仮想通貨で一気に500万円の利益を確定させると、合計800万円。所得税率が20%の段から23%の段に跳ね上がります。

しかし、同じ500万円の利益を5年に分けて100万円ずつ確定させれば、毎年の課税所得は400万円。20%の段のままで済み、23%の段に入らずに済むわけです。

分割利確の本質は「累進課税の階段を上がらないように、利益を複数年に薄く広げる」ことです。

年収別×利確額別の税金シミュレーション

ここからが本題です。実際にどれくらい税金が変わるのか、具体的な数字で見ていきます。

※以下のシミュレーションでは、給与所得控除・基礎控除・社会保険料控除を適用した「課税所得」をベースに計算しています。復興特別所得税(2.1%)は簡略化のため省略しています。

ケース1:年収400万円の会社員が300万円の含み益を利確する

年収400万円の会社員の課税所得はおよそ170万円(給与所得控除・基礎控除・社会保険料控除後)。ここに仮想通貨の利益が乗ります。

  • 給与の課税所得:約170万円(所得税率5%の段)
  • 仮想通貨の含み益:300万円
  • 比較:一括利確 vs 3年で100万円ずつ利確

一括利確した場合は、課税所得が170万+300万=470万円に。所得税率は20%の段まで上がります。仮想通貨の利益300万円にかかる税金は、所得税と住民税を合わせて約50万円です。

一方で3年で毎年100万円ずつ利確した場合各年の課税所得は170万+100万=270万円。10%の段に留まります。各年の仮想通貨の利益100万円にかかる税金は約15万円。3年合計で約45万円です。

3年に分散するだけで税金が約5万円安くなりました。年収400万円・含み益300万円のケースでは、分割利確の節税効果は「ある」けど「劇的ではない」という結果です。

ケース2:年収700万円の会社員が500万円の含み益を利確する

年収700万円の会社員の課税所得はおよそ370万円。すでに20%の段にいます。

  • 給与の課税所得:約370万円(所得税率20%の段)
  • 仮想通貨の含み益:500万円
  • 比較:一括利確 vs 5年で100万円ずつ利確

一括利確した場合は、課税所得が370万+500万=870万円に。所得税率は23%の段に。仮想通貨の利益500万円にかかる税金は、所得税と住民税を合わせて約130万円です。

一方で5年で毎年100万円ずつ利確した場合各年の課税所得は370万+100万=470万円。20%の段に留まります。各年の仮想通貨の利益100万円にかかる税金は約20万円。5年合計で約100万円です。

5年に分散すると約30万円の節税になりました。年収が高く、含み益が大きいほど、分割利確の効果は大きくなります。

なふと

30万円って結構デカいですよね。でもこの30万円のために5年間もチマチマ利確して、その間に価格が暴落したら意味がない。ここが分割利確の難しいところです。

シミュレーション結果の早見表

代表的な年収と含み益の組み合わせで、一括利確と分割利確の税額差をまとめました。

年収 含み益 一括利確の税額 分割利確の税額 節税額
400万円 100万円 約15万円 約15万円 ほぼ0円
400万円 300万円 約50万円 約45万円(3年) 約5万円
700万円 300万円 約75万円 約60万円(3年) 約15万円
700万円 500万円 約130万円 約100万円(5年) 約30万円
1,000万円 500万円 約180万円 約130万円(5年) 約50万円

表からわかるのは、分割利確の効果が大きくなるのは「年収が高い人」かつ「含み益が大きい人」に限られるということ。年収400万円で含み益100万円程度なら、無理に分割する意味はほとんどありません。

節税対策をもっと幅広く知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

「年間20万円以下なら申告不要」の落とし穴

「少しずつ利確」を考える人の多くが頼りにしているのが、「給与所得者は雑所得が年間20万円以下なら確定申告不要」というルールです。これ自体は事実ですが、このルールだけを頼りにすると痛い目に遭います。

所得税の確定申告は不要でも、住民税の申告は必要

最も多い誤解がこれです。20万円以下で確定申告が不要になるのは「所得税」の話だけ。住民税には20万円ルールが存在しないため、たとえ利益が1万円でも、お住まいの市区町村に住民税の申告が必要です。

住民税は一律10%なので、仮に利益が19万円なら住民税19,000円が発生します。「完全に税金ゼロ」にはならないのです。

「20万円以下なら税金ゼロ」は間違いです。正確には「20万円以下なら”所得税の確定申告”が不要」であり、住民税は別途かかります。

20万円以下を狙いすぎると「利確にかかる年数」が非現実的になる

たとえば含み益が500万円ある場合、毎年20万円ずつ利確すると25年かかります。1,000万円の含み益なら50年

その間ずっと仮想通貨を保有し続けるリスクを取ることになります。暴落、取引所の破綻、ハッキング——50年間何も起きない保証はどこにもありません。

なふと

20万円ルールに固執しすぎて50年かけるくらいなら、数年で利確して税金を払った方がよっぽど合理的だと個人的には思います。50年なんて気の長い話をしている間に、税制が変わる方が先です。

そもそも「20万円以下」の計算は仮想通貨だけじゃない

この20万円基準は、仮想通貨の利益だけで判定するわけではありません。「給与所得以外の所得」の合計が20万円以下かどうかで判定されます。

つまり、副業収入が15万円ある状態で仮想通貨の利益が10万円あれば、合計25万円で20万円を超えるため、確定申告が必要になります。副業やフリマアプリの利益がある人は特に注意してください。

20万円ルールは「仮想通貨の利益だけ」ではなく「給与以外のすべての所得の合計」で判定されます。他に副業収入があるなら、枠はその分だけ小さくなります。

分割利確を実践する時の注意点

ここまで読んで「分割利確はやる価値がある」と判断した人に向けて、実践上の注意点を3つ共有します。

年末年始に分けるだけで税金が変わる

分割利確の最もシンプルな方法は、12月に半分、翌1月に半分を売ることです。仮想通貨の税金は1月1日〜12月31日の1年間で区切られるため、年末年始にまたぐだけで利益を2つの年度に分散できます。

たとえば200万円の利益を確定させたい場合、12月に100万円分を売り、1月に残りの100万円分を売る。これだけで各年の課税所得を抑えられます。

ただし、年末年始で価格が大きく動くリスクがあることは忘れないでください。節税のために翌年に回した結果、1月に価格が30%下がったら本末転倒です。

年末年始の分割は手軽で効果的ですが、「税率の差」と「価格変動リスク」を天秤にかけて判断してください。

利確のたびに「取得単価」が変わることを忘れない

仮想通貨の税金計算では、「いくらで買ったか(取得単価)」が利益の計算に直結します。複数回に分けて購入した場合、取得単価の計算方法には「総平均法」と「移動平均法」の2つがあります。

一度選んだ計算方法は原則3年間変更できません。届け出をしなければ自動的に「総平均法」が適用されます。分割利確を行うと残りの保有分の取得単価が変動するため、年末にまとめて計算しようとすると非常に複雑になります。

なふと

正直、手計算でやるのはかなりしんどいです。CryptactやGtaxなどの損益計算ツールを使った方が圧倒的に楽ですし、間違いも少ない。僕は確定申告の時期にツールを使って一気に計算しています。

2026年以降の分離課税が実現したら、この戦略は不要になる可能性がある

仮想通貨の利益に「申告分離課税(一律20.315%)」を導入する方向で税制改正が進んでいます。金融商品取引法の改正が前提となるため、施行は早くても2028年1月が有力です。もし実現すれば、いくら利益が出ても税率は一定になるため、分割利確で税率を下げるという戦略自体が意味をなさなくなります。

ただし、この改正は「国内の登録済み取引所で扱われる特定の仮想通貨」に限られる可能性もあり、海外取引所の利益やステーキング報酬などは引き続き総合課税のままとなる場合もあります。

税制改正の最新動向はこちらの記事で詳しく解説しています。

分離課税が実現すれば分割利確のメリットは消えます。今のうちに分割すべきか、改正を待つべきかは、含み益の額とリスク許容度で判断してください。

よくある質問

含み益のまま保有し続ければ税金はかからない?

はい、保有しているだけでは課税されません。売却(日本円への換金)、他の仮想通貨への交換、商品やサービスの決済に使用した時点で初めて利益が確定し、課税対象になります。

仮想通貨を他の仮想通貨に交換しても利確扱いになる?

はい、なります。たとえばビットコインをイーサリアムに交換した場合、交換時点のBTCの時価と取得単価の差額が利益として課税対象になります。「円に換えていないから大丈夫」という認識は誤りです。

仮想通貨で損が出た年に、損失を翌年に繰り越すことはできる?

現行の税制では、仮想通貨の損失を翌年以降に繰り越すことはできません。ただし、同じ年の他の仮想通貨取引の利益とは相殺(内部損益通算)が可能です。2026年以降の申告分離課税が実現すれば、3年間の損失繰越控除が導入される可能性があります。

確定申告の計算が複雑で自信がない場合はどうすればいい?

CryptactやGtaxといった仮想通貨専用の損益計算ツールを使えば、取引所のデータを取り込むだけで損益計算を自動化できます。利益が大きい場合は、仮想通貨に詳しい税理士への相談(費用5〜15万円程度)も検討してください。税理士費用は経費として計上できます。

分離課税はいつから適用される?

金融商品取引法の改正を前提に、申告分離課税(一律20.315%)の導入が検討されています。施行は早くても2028年1月が有力ですが、スケジュールはまだ確定していません。最新の動向はこちらの記事で解説しています。

まとめ

「仮想通貨を少しずつ利確すれば税金が抑えられる」は、条件付きで正しいです。ただし、万能な節税法ではありません。

  • 分割利確の節税効果は「年収が高い×含み益が大きい」ほど効果的
  • 年収400万円・含み益100万円程度なら、分割しても差はほぼゼロ
  • 「20万円以下で税金ゼロ」は誤解。住民税の申告は必要
  • 年末年始に分けるのが最もシンプルな分割方法
  • 2026年以降の分離課税が実現すれば、この戦略自体が不要になる可能性
なふと

個人的には、分割利確に固執するよりも「利益が出たタイミングで適切に売って、税金を払うべきものとして受け入れる」方がストレスなく投資を続けられると思っています。節税のために5年も10年もチマチマ売り続けるのは、精神的にかなりキツい。

節税は大事ですが、それ以上に大事なのは「利益を確保する」ことです。税金を恐れて売り時を逃し、含み益がゼロになったという話は珍しくありません。

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