仮想通貨を家族にあげたら税金はいくら?贈与税の計算と最大の落とし穴

仮想通貨を家族にあげたい。子供に将来のために渡しておきたい。配偶者と資産を分散したい。

こうした思いは自然なことですが、仮想通貨の贈与には「贈与税」という税金がかかる可能性があります。そして、それだけではありません。

この記事では、仮想通貨の贈与にかかる税金の計算方法を具体的な数字で解説した上で、多くの人が見落としている「取得価額の引き継ぎ」という最大の落とし穴について掘り下げます。

結論を先に言えば、仮想通貨の贈与は「110万円以下なら非課税」という単純な話ではありません。知らずに渡すと、もらった側が将来とんでもない税金を払うことになる可能性があります。

目次

仮想通貨の贈与に税金はかかるのか?

まず前提をはっきりさせましょう。仮想通貨は「財産的価値のある資産」として扱われるため、現金や不動産と同じように、贈与すれば贈与税の対象になります。

【結論】年間110万円を超えたら贈与税がかかる

贈与税には「年間110万円の基礎控除」があります。1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計が110万円以下であれば、贈与税はかかりません。申告も不要です。

ただし、110万円を超えた場合は、超えた部分に対して贈与税が課税されます。仮想通貨だけでなく、同じ年に受け取った現金や他の財産も合算されるので注意してください。

110万円の基礎控除は「もらう側」が基準です。贈与する側ではありません。3人に110万円ずつ渡せば、受け取った各人がそれぞれ非課税の範囲内に収まります。

「送金しただけ」でも贈与になる

意外と見落としがちなのが、取引所を介さずにウォレット間で直接送金した場合でも、贈与税の課税対象になるという点です。

「取引所を通していないから記録が残らないだろう」と思うかもしれませんが、ブロックチェーン上の取引は全て記録されています。税務署が調査すれば、送金の事実は把握できます。

「あげた」「もらった」という認識がなくても、仮想通貨を無償で移動させた時点で、法律上は贈与です。

贈与税の評価は「贈与時の時価」で決まる

贈与した仮想通貨の価額は、贈与した日の市場価格(時価)で評価されます。購入した時の価格ではなく、渡した日のレートがベースです。

例えば、1BTCを10万円で購入していたとしても、贈与日に1BTC=500万円であれば、500万円として贈与税の計算に使われます。

なふと

仮想通貨は値動きが激しいから、「あげた日」の価格次第で税額が大きく変わる。これが現金の贈与と違って面倒なところです。

贈与税の計算方法をシミュレーションで解説

「贈与税がかかること」は分かった。では、具体的にいくらかかるのか。計算のステップを整理して、実際の数字で見ていきましょう。

暦年課税の基本的な計算ステップ

贈与税の計算は、以下の3ステップです。

  • STEP 1:1年間にもらった財産の合計額を出す
  • STEP 2:合計額から基礎控除(110万円)を引く
  • STEP 3:残った金額に税率をかけ、控除額を引く

STEP 3の税率は、贈与額に応じて段階的に上がる累進課税です。一般的な贈与(一般贈与財産)の場合、税率は以下の通りです。

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%なし
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

なお、直系尊属(親・祖父母)から18歳以上の子・孫への贈与は「特例贈与財産」として、一般贈与より低い税率が適用されます。

500万円分のビットコインを贈与した場合

具体例で計算してみましょう。贈与日のビットコインの時価が500万円だった場合。

  • 課税価格:500万円 − 110万円(基礎控除)= 390万円
  • 税率:20%(400万円以下の区分)
  • 贈与税額:390万円 × 20% − 25万円(控除額)= 53万円

500万円分の仮想通貨をもらったら、53万円の贈与税を翌年の3月15日までに納付する必要があります。もらった側が負担する税金です。

なふと

「もらったものに税金がかかる」って感覚的に納得しにくいけど、これが贈与税のルール。知らなかったでは済まないので、事前の計算が本当に大事です。

複数取引所で価格が違う場合はどうする?

同じビットコインでも、取引所によって価格が微妙に異なることがあります。この場合、納税者にとって有利な(=低い)価格を選択することが可能です。

例えば、贈与日にA取引所では1BTC=510万円、B取引所では1BTC=495万円だった場合、495万円を評価額として採用できます。金額が大きいほど、この差が節税に効いてきます。

最大の落とし穴「取得価額の引き継ぎ」とは

ここからがこの記事の最も重要なパートです。贈与税の計算自体は、正直そこまで難しくありません。問題は「その先」にあります。

もらった仮想通貨を売ったら、また税金がかかる

贈与でもらった仮想通貨を、もらった側が将来売却した場合。その売却益に対して所得税(雑所得)が課税されます。ここまでは想像がつくかもしれません。

問題は、その売却益の計算に使われる「取得価額」です。

贈与で取得した仮想通貨の取得価額は、贈与者(あげた人)が最初に購入した価格が引き継がれます。「もらった時の時価」ではありません。

つまり、贈与税は「もらった日の時価」で計算されるのに、所得税は「元の持ち主が買った時の価格」で計算される。このズレが、巨大な税負担を生む原因です。

100万円で買った→贈与時1,000万円→売却1,200万円のケース

具体的な数字で見てみましょう。

  • 父が100万円で購入したビットコイン
  • 贈与時の時価:1,000万円
  • 子供が1,200万円で売却

① 贈与税の計算

課税価格:1,000万円 − 110万円 = 890万円
贈与税額:890万円 × 40% − 125万円 = 231万円

② 売却時の所得税の計算

取得価額は父の購入価格100万円が引き継がれるため:
譲渡益:1,200万円 − 100万円 = 1,100万円
所得税+住民税(最大55%)= 約460万円(他の所得との合算による)

③ 合計税負担

贈与税231万円 + 所得税約460万円 = 合計約691万円

もし取得価額が「贈与時の時価(1,000万円)」で計算されたら、売却益は200万円で所得税は約40万円程度。しかし実際には取得価額が100万円に引き継がれるため、税負担が膨れ上がります。

贈与税と所得税を足し合わせると、受け取った資産の価値に対して実質的な税率が50%を超えるケースが普通に発生します。

二重課税で「税率110%超え」が起きる仕組み

さらに極端なケースを想定してみましょう。

仮に、贈与時の時価が1,000万円で、その後価格が変わらず1,000万円で売却したとします。

この場合、売却益は1,000万円 − 100万円(引き継がれた取得価額)= 900万円。所得税+住民税で最大約450万円。贈与税231万円と合わせて合計約681万円

「1,000万円もらって、税金で681万円持っていかれた」。これが二重課税の現実です。含み益が大きければ大きいほど、この問題は深刻になります。

なふと

「税率110%超え」っていうのは、もらった資産より税金の方が多くなるケース。相続の文脈で指摘されてるけど、贈与でも同じ構造の問題が起きます。

株式で使える「取得費加算の特例」は仮想通貨に使えない

株式や不動産の場合、相続や贈与で支払った税金の一部を、売却時の取得費に加算できる「取得費加算の特例」という制度があります。これがあれば二重課税の負担が軽減されます。

しかし、仮想通貨にはこの特例が適用されないのが現状です。仮想通貨の売却益は「雑所得」として扱われるため、株式とは異なる税制上の扱いを受けています。

株式なら使える救済措置が仮想通貨には存在しない。これが「取得価額の引き継ぎ」問題を深刻にしている根本原因です。

税制改正の最新動向や、申告分離課税への移行議論については、こちらの記事も参考にしてください。

相続と贈与、仮想通貨はどっちが得か?

仮想通貨を次世代に移す方法には「生前贈与」と「死後の相続」があります。どちらが有利かは、保有する仮想通貨の含み益の大きさと、移したい金額によって異なります。

相続税 vs 贈与税のメリット・デメリット

生前贈与死後の相続
基礎控除年間110万円(受贈者ごと)3,000万円+600万円×法定相続人数
税率10〜55%10〜55%
タイミング制御自分で選べる(価格が低い時など)選べない
計画性毎年少しずつ移転可能一括
取得価額の引き継ぎありあり
二重課税リスクありあり(さらに深刻)
秘密鍵の問題なし(生前に直接渡せる)相続人がアクセスできない可能性

注目すべきは、二重課税リスクは相続でも同じ構造で発生するという点です。むしろ相続の方が、相続税の基礎控除が大きい分、含み益が大きい仮想通貨の場合に売却時の税負担がさらに重くなるケースがあります。

大きな含み益があるなら「生前に売却→現金で贈与」が安全

取得価額の引き継ぎ問題を完全に回避する方法は、実はシンプルです。

仮想通貨を「渡す前に売却」して、現金にしてから贈与する。これなら、もらった側が売却時の所得税を負担する必要がありません。

もちろん、売却した時点で贈与者側に所得税がかかります。しかし、「いつ・いくらで売るか」を自分でコントロールできるため、税金の見通しが立てやすい。もらった側が将来予想外の税負担を負うリスクをゼロにできます。

価格が低いときに贈与するという戦略

仮想通貨をそのまま贈与する場合、贈与時の時価が評価額になるため、価格が下がっているタイミングで贈与するのが有利です。

例えば、1BTC=800万円の時ではなく、1BTC=400万円に下がった時に贈与すれば、贈与税の課税価格を半分に抑えられます。仮想通貨は値動きが激しいからこそ、この「タイミング戦略」が有効に機能します。

なふと

暴落した時って精神的にキツいけど、贈与という視点で見れば「節税のチャンス」でもあるんですよね。価格が低い時に渡して、もらった側が将来の上昇で利益を得る、という構図。

仮想通貨の贈与で使える3つの節税テクニック

仮想通貨の贈与で発生する税負担を、合法的に最小化するための具体的な方法を紹介します。

暦年贈与(110万円×人数×年数)で非課税枠を最大化

最もシンプルかつ効果的な節税方法が、暦年贈与の非課税枠をフル活用することです。

例えば、子供2人と孫4人に対して、毎年110万円ずつ贈与するとします。

110万円 × 6人 × 10年 = 6,600万円を非課税で移転可能

一度に大きな金額を渡すと高い税率がかかりますが、時間をかけて分散すれば、非課税枠の範囲内で大きな資産を移転できます。

「急いで渡す」のではなく「計画的に少しずつ渡す」。これが仮想通貨の贈与における最強の節税戦略です。

贈与契約書を毎年作成する(名義預金リスク回避)

暦年贈与を活用する際に、絶対にやっておくべきことがあります。それが贈与契約書の作成です。

贈与契約書がないと、税務署から「これは贈与ではなく、名義預金だ」と指摘されるリスクがあります。名義預金とみなされると、贈与が無かったことにされ、相続時に全額が相続財産に組み込まれてしまいます。

贈与契約書には、以下の項目を記載します。

  • 贈与者と受贈者の氏名・住所
  • 贈与する財産の内容(仮想通貨の種類・数量・贈与日時点の時価)
  • 贈与する日付
  • 双方の署名・押印

毎年、贈与の都度作成してください。「10年分まとめて」では効果がありません。

相続時精算課税制度の使いどころ

もう一つの選択肢として「相続時精算課税制度」があります。これは、60歳以上の親・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に適用でき、累計2,500万円まで贈与税が非課税になる制度です。

ただし、この制度を使って贈与した財産は、贈与者が亡くなった時に相続財産に加算されて相続税が計算されます。つまり、贈与税は非課税でも、最終的に相続税として精算されるということです。

この制度が有効なのは、「将来大幅に値上がりする」と確信がある仮想通貨を渡す場合です。贈与時の時価で相続税が計算されるため、その後いくら値上がりしても、贈与時の価格のまま相続税を計算できます。

なふと

ただし、相続時精算課税を一度選ぶと、同じ贈与者からの贈与は暦年課税に戻せません。選択は慎重に。税理士に相談してから決めるのが安全です。

贈与以外の仮想通貨の節税方法についてはこちらも参考にしてください。

贈与税の確定申告の方法と期限

贈与税が発生する場合、確定申告が必要です。ここでは具体的な手続きを整理します。

申告が必要なケースと不要なケース

判断基準はシンプルです。

  • 申告が不要なケース:1年間にもらった財産の合計が110万円以下(暦年課税の場合)
  • 申告が必要なケース:110万円を超えた場合、または相続時精算課税制度を選択した場合(非課税枠内でも申告が必要)

申告期限は翌年2月1日〜3月15日

贈与税の申告と納税は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに行います。所得税の確定申告(2月16日〜3月15日)と時期が重なるので、忘れずに手続きしてください。

期限内に申告・納税をしないと、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。

税金の支払いを放置した場合のリスクについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

e-Taxでの提出方法と必要書類

贈与税の申告は、以下の方法で提出できます。

  • e-Tax(国税電子申告・納税システム)でオンライン提出
  • 郵便または信書便で税務署に送付
  • 税務署の窓口に直接提出

必要書類としては、贈与税の申告書(第一表)、仮想通貨の取引履歴や残高証明書(贈与日時点の時価を証明するもの)、贈与契約書(作成している場合)が求められます。

仮想通貨の贈与は「記録」が命です。取引日、取引所名、送金先アドレス、贈与日の時価スクリーンショットなど、証拠を確実に残しておきましょう。

よくある質問

仮想通貨を友達にあげた場合も贈与税はかかりますか?

はい。家族だけでなく、友人や知人への贈与でも、もらった側に贈与税が課されます。110万円の基礎控除を超える場合は、申告・納税が必要です。

夫婦間で仮想通貨を移動させても贈与税はかかりますか?

はい。夫婦間であっても、無償で仮想通貨を渡せば贈与に該当し、年間110万円を超える場合は贈与税の対象になります。ただし、居住用不動産の贈与には最大2,000万円の特別控除がありますが、仮想通貨にはこの特例は適用されません。

贈与した仮想通貨が翌日に暴落した場合、贈与税は戻ってきますか?

戻ってきません。贈与税は贈与日の時価で確定するため、その後に価格が下落しても税額は変わりません。これが仮想通貨の贈与における大きなリスクの一つです。

NFTの贈与にも贈与税はかかりますか?

NFTも「財産的価値のある資産」であれば贈与税の対象になります。ただし、NFTの評価方法は確立されていない部分が多く、市場価格がある場合はその価格、ない場合は個別に評価することになります。税理士に相談することをおすすめします。

未成年の子供に仮想通貨を贈与することはできますか?

法律上は可能です。ただし、未成年者への贈与の場合、親権者が代わりに管理・申告を行う必要があります。また、取引所の口座開設に年齢制限がある場合があるため、送金方法には注意が必要です。

2026年の税制改正で仮想通貨の贈与税は変わりますか?

2026年度の税制改正大綱では、仮想通貨の売却益に対する申告分離課税への移行が議論されていますが、これは所得税に関するもので、贈与税の基礎控除額や税率には直接影響しません。ただし、税制は今後変更される可能性があるため、最新の情報を確認することをおすすめします。

まとめ

仮想通貨を家族に渡すこと自体は、決して悪いことではありません。むしろ、将来の相続対策として計画的に行えば、大きな節税効果を得ることもできます。

ただし、「なんとなく送金した」では取り返しのつかない税負担を生む可能性があります。この記事のポイントを整理します。

  • 年間110万円を超える仮想通貨の贈与には贈与税がかかる
  • 評価は「贈与時の時価」で行われる。購入価格ではない
  • 最大の落とし穴は「取得価額の引き継ぎ」。もらった側が売ると、元の所有者の購入価格で所得税が計算される
  • 含み益が大きい場合は「売却→現金で贈与」が安全
  • 暦年贈与(110万円×人数×年数)の計画的活用が最強の節税策
  • 贈与契約書を毎年作成し、記録を残すことが必須

仮想通貨の贈与は「送る」だけでなく「記録する」「申告する」までがセット。判断に迷ったら、仮想通貨に詳しい税理士への相談を強くおすすめします。

なふと

仮想通貨の税制はまだ発展途上で、今後改善される可能性もある。でも「今のルール」を知っておかないと、知らないうちに損をする。この記事がその第一歩になれば。

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