580億円流出のコインチェックが、今も国内ナンバーワン取引所であるわけ

「コインチェック 怪しい」。こう検索する気持ちは、よくわかります。

2018年1月に起きたNEM流出事件では、約580億円の暗号資産が不正送金されました。日本の仮想通貨史上、最大の事件です。あの報道を覚えている人なら「コインチェック=怪しい」と感じるのは当然ですよね。

ただ、あの事件から8年が経った今、コインチェックは229万口座を抱え、2024年にはNASDAQにも上場しています。

怪しいのか、怪しくないのか。僕はこう答えます。

「怪しかった」のは事実。でも今の判断は、当時の印象ではなくデータで下すべきです。

この記事では「怪しい」と言われる根拠を1つずつ検証して、今のコインチェックが信頼できるかどうかを判断材料ごとに確認していきます。

目次

コインチェックが「怪しい」と言われる3つの根拠

「怪しい」という感覚にも、ちゃんとした理由があります。まずはその中身を正確に把握するところから始めます。

2018年1月、NEM約580億円が流出した

2018年1月26日、コインチェックから約5億2,630万XEM(当時の時価で約580億円)が不正アクセスによって流出しました。影響を受けた顧客は約26万人です。

原因はシンプルで、2つの技術的な問題でした。

1つ目はホットウォレット管理。ホットウォレットとは常にインターネットに接続された状態のウォレットで、利便性は高いものの外部からの攻撃に弱い。もう1つはマルチシグ(複数の署名)が未実装だったこと。送金に複数の承認が不要だったため、1つの鍵が盗まれるだけで全額送金が可能な状態でした。

つまり「鍵が1本しかない金庫をインターネットに繋ぎっぱなしにしていた」状態です。これなら攻撃者に狙われるのは当然でした。

コインチェックはその後、流出NEM保有者に対して88.549円×保有数で日本円補償を実施。返金総額は約463億円でした。

金融庁から業務改善命令を受けた過去がある

NEM流出事件の直後、金融庁はコインチェックに業務改善命令を出しました。当時のコインチェックは正式な登録業者ではなく、「みなし業者」として営業していた状態です。

「みなし業者」とは、改正資金決済法の施行前から営業していた業者に与えられた暫定的な地位のこと。金融庁の審査を通過していないまま営業を続けていたわけで、この事実が「金融庁に怒られた会社」という印象を強く残しました。

フィッシングサイトや偽アプリの報告が今も出ている

「コインチェック 怪しい」と検索する人の中には、コインチェック自体ではなく、コインチェックを騙った偽サイトや偽アプリに遭遇した人もいます。

これはコインチェックに限った話ではありません。口座数が多い大手取引所ほど、フィッシング詐欺のターゲットになりやすい。「有名だから狙われる」という構造であり、取引所自体の安全性とは別の問題です。

「怪しい」と感じる根拠は主にこの3つ。どれも事実に基づいた不安です。ただし、2018年と今では状況がまるで違います。

NEM流出事件の被害者はお金が返ってきたの?

はい。コインチェックは88.549円×保有XEMで計算した日本円補償を実施し、約463億円が全額返金されました。被害者が泣き寝入りする結果にはなっていません。

事件後のコインチェックに起きた4つの変化

「怪しかった」のは事実です。でも「今も怪しいか」は、その後に何が変わったかで判断すべき話です。結論から言えば、事件後のコインチェックは経営体制・セキュリティ・法的地位のすべてが変わっています。

マネックスグループが2018年4月に買収した

NEM流出事件の約3ヶ月後、東証プライム上場企業であるマネックスグループがコインチェックを買収しました。個人が立ち上げた仮想通貨ベンチャーが、大手金融グループの子会社に変わった瞬間です。

買収後は経営陣が刷新され、コンプライアンス体制や内部管理が金融機関レベルに引き上げられました。マネックスグループは証券業界で20年以上の運営実績があり、金融庁対応のノウハウを持っていたことが大きい。

2019年1月、金融庁に正式登録された

2019年1月11日、コインチェックは改正資金決済法に基づく暗号資産交換業者として正式に登録されました。「みなし業者」から「正式登録業者」への移行です。

金融庁の登録審査では、顧客資産の管理体制・内部統制・マネーロンダリング対策など多方面がチェックされます。事件を起こした会社がこの審査を通過できたのは、体制が根本的に変わったことの証拠でもあります。

コールドウォレットとマルチシグで資産管理を変えた

NEM流出の直接原因だった「ホットウォレット管理」と「マルチシグ未実装」の2つの問題は、どちらも解消されています。

現在のコインチェックでは、顧客の暗号資産をコールドウォレット(インターネットから切り離されたオフライン環境)で管理。送金にはマルチシグ(複数の秘密鍵による署名)が必要な設計に変更されました。

さらに、顧客資産と自社資産の分別管理も徹底されています。万が一コインチェックが経営難に陥っても、顧客資産は法的に保護される仕組みです。

2024年12月、コインチェックグループがNASDAQに上場した

2024年12月11日、コインチェックグループ(ティッカー:CNCK)が米国NASDAQ市場に上場しました。

NASDAQに上場するには、財務状況・コーポレートガバナンス・内部統制・情報開示基準など、厳格な審査をクリアしなければなりません。「怪しい会社」がこの審査を通過できるかどうか、冷静に考えてみてください。

金融庁の正式登録とNASDAQ上場。この2つの審査を通過した取引所を「怪しい」と呼ぶなら、日本のほとんどの取引所が怪しいことになります。

なふと

ちなみに、金融庁に登録されている暗号資産交換業者は2025年10月末時点で28社です。コインチェックはその中でも229万口座・預かり資産約8,600億円と、規模で国内トップクラスに位置しています。

それでも残るコインチェックのデメリット

安全性が改善されたからといって、「欠点がない」わけではありません。コインチェックを使うなら知っておくべきデメリットを正直に書きます。

販売所のスプレッドが広い

コインチェックのアプリで暗号資産を買うとき、デフォルトの画面は「販売所」です。販売所は手数料が無料と表示されますが、実際にはスプレッド(売値と買値の差)が上乗せされています。

このスプレッドがけっこう大きい。コインチェックの販売所ではビットコインの片道スプレッドが5〜6%程度かかるケースがあり、10万円分の売買で5,000〜6,000円分のコスト差が生じます。

販売所で買う場合
取引所(板取引)で買う場合
  • アプリで操作がかんたん
  • 即時に約定する
  • スプレッドが広く実質コストが高い
  • 板画面で指値注文ができる
  • スプレッドが狭く手数料も安い
  • 初心者には画面がやや複雑

結論としては、コインチェックを使うなら取引所(トレードビュー)で板取引をするのが基本です。販売所を使う限りスプレッド負けし続けます。

コインチェックの手数料は高いの?

販売所のスプレッドは広めですが、トレードビュー(取引所)を使えば他社と同等の水準で取引できます。「手数料が高い」と感じている人の多くは、販売所しか使っていない可能性があります。

コインチェックの手数料構造についてはこちらで詳しく比較しています。

レバレッジ取引ができない

コインチェックは現物取引のみで、レバレッジ取引には対応していません。少ない元手で大きく張りたい人にとっては選択肢から外れます。

ただし初心者にとっては、レバレッジがない方がむしろ安全です。国内のレバレッジ上限は2倍ですが、それでも相場が急落したときの損失は現物の2倍に膨らみます。コインチェックがレバレッジに対応していないことを「デメリット」と感じるなら、少なくとも現物取引に慣れてから検討するべきです。

コインチェックのデメリットは「安全性」ではなく「取引コストと機能の制限」に集中しています。怪しさとは別の話です。

なふと

スプレッドの広さはけっこう痛いポイントですが、板取引を使えば回避できます。アプリのデフォルト画面が販売所なのが分かりにくい部分ですね。

「怪しい取引所」を自分で見分ける3つのチェックポイント

ここまでの話はコインチェックに限った内容でした。でも本当に大事なのは、どの取引所を使うときにも自分で安全性を判断できるようになることです。チェックすべきポイントは3つだけです。

金融庁の登録業者リストに載っているか

日本で暗号資産交換業を行うには、金融庁への登録が必須です。登録されていない業者は違法な営業をしていることになります。

確認方法はかんたんで、金融庁の公式サイトで「暗号資産交換業者一覧」を検索するだけです。コインチェックは関東財務局長 第00014号として登録されています。

海外取引所の多くはこのリストに載っていません。日本居住者向けのサービスを提供しているのに未登録の場合、金融庁から警告が出ていることがあります。

顧客資産の分別管理がされているか

分別管理とは、取引所の自社資産と顧客の預かり資産を別々に管理する仕組みです。これがない取引所では、運営会社が経営破綻したときに顧客の資産も巻き込まれる可能性があります。

日本の金融庁登録業者には分別管理が義務付けられています。コインチェックを含む国内の登録業者を使うなら、この点はクリアされています。

運営会社の親会社や上場状況を確認する

取引所の運営元が上場企業か、あるいは上場企業の子会社であるかは1つの判断材料です。上場企業には決算開示・監査法人のチェック・株主への説明責任があり、不正な運営を続けるのが構造的に難しくなります。

コインチェックの場合は、東証プライム上場のマネックスグループの子会社であり、さらにコインチェックグループ自身もNASDAQに上場しています。二重の上場基準をクリアしている取引所は、国内でもほとんどありません。

金融庁登録・分別管理・運営会社の上場状況。この3つを確認すれば「怪しいかどうか」は自分で判断できます。

取引所の倒産リスクについてさらに詳しく知りたい場合はこちらの記事にまとめています。

コインチェックが怪しいのか、自分で判断するための材料

コインチェックは今も危ないの?

2018年の事件後、マネックスグループによる買収・金融庁への正式登録・コールドウォレット+マルチシグの導入・NASDAQ上場と、セキュリティと信頼性の面で大きく変わっています。「今も危ない」と判断する根拠は、現状ではほぼありません。

初心者がコインチェックを使って大丈夫?

金融庁登録済み・分別管理あり・上場企業運営という条件を満たしており、安全性の面では問題ありません。ただし販売所のスプレッドが広いため、板取引(トレードビュー)の使い方を覚えてから利用するのがおすすめです。

コインチェックが潰れたら預けたお金はどうなる?

日本の登録業者には顧客資産の分別管理が義務付けられています。仮に経営破綻しても、顧客の資産は法的に保護される仕組みです。詳しくは以下の記事でまとめています。

「怪しい」と感じたら、まず金融庁の登録業者一覧を確認。これだけで日本の正規業者かどうかは一瞬で判断できます。

まとめ

  • 「コインチェックが怪しい」の根拠は主に2018年のNEM流出事件(約580億円流出)
  • 事件の原因はホットウォレット管理+マルチシグ未実装。被害者には約463億円が日本円で全額返金
  • 事件後、マネックスグループが買収 → 金融庁に正式登録 → コールドウォレット+マルチシグ導入 → NASDAQ上場と変化
  • 2025年3月末時点で229万口座・預かり資産約8,600億円の国内トップクラスの取引所
  • デメリットはスプレッドの広さとレバレッジ非対応。安全性ではなく取引コストと機能制限の問題
  • 金融庁登録・分別管理・運営会社の上場状況の3点を確認すれば、自分で判断できる

「怪しい」と感じたこと自体は間違いではありません。580億円が消えた事件は事実であり、それを理由に警戒するのは正常な判断です。

ただ、事件から8年が経ち、コインチェックは経営・セキュリティ・法的地位のすべてが入れ替わりました。今の判断基準は「8年前の事件の印象」ではなく、「金融庁に登録されているか」「資産の分別管理があるか」「運営元は信頼できるか」の3つの事実で下すべきです。

なふと

怪しいかどうかは、ネットの評判ではなく自分で調べて判断するのが一番確実です。この記事がその材料になっていたら嬉しいです。

コインチェックを使うなら、まず取引所(板取引)の使い方を覚えておくとスプレッドで損しません。

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