コインチェックが倒産したら、預けているビットコインやイーサリアムはどうなるの?
2022年のFTX破綻をきっかけに、この疑問を持つ人は増えました。世界第2位の取引所が一夜にして消え、顧客の資産が凍結された事件は衝撃的でしたよね。
結論から言えば、コインチェックの顧客資産は日本の法律で保護されています。ただし「100%安全」ではありません。
この記事では、コインチェック固有の資産保護の仕組みと、法律でもカバーしきれないリスクの両面を解説します。
コインチェックが倒産しても資産は戻ってくるのか
先に答えを書きます。コインチェックが仮に倒産しても、顧客の資産は「分別管理」と「優先弁済権」という2つの法的な仕組みで保護されています。銀行の預金保険とは異なる制度ですが、方向性は同じです。
「分別管理」で会社のお金と顧客のお金は別々に保管されている
コインチェックでは、顧客から預かった日本円を日証金信託銀行株式会社に金銭信託しています。会社の運転資金とは完全に分けて管理されている、ということです。
暗号資産についても同様で、インターネットに接続されていないコールドウォレットに保管されています。顧客ごとの保有量はデータ上で識別できる状態になっており、「誰がいくら持っているか」を常に追跡できる仕組みです。
さらに、帳簿上の残高と実際の保管資産の残高は毎営業日照合されています。もし不足が生じた場合、2営業日以内に追加の信託が行われる体制です。
改正資金決済法が顧客に「優先弁済権」を与えている
2019年に改正され2020年5月に施行された資金決済法には、もうひとつ大きな保護があります。「優先弁済権」です。
これは、取引所が破綻したときに顧客が他の債権者(銀行・取引先・従業員など)よりも先に資産を受け取れる権利です。つまり、会社に借金があっても、顧客の暗号資産は「先に返す」対象になります。
銀行でいう預金保険制度、証券会社でいう投資者保護基金とは制度の枠組みは違いますが、「顧客の資産を優先的に守る」という方向性は同じです。
分別管理で「混ぜない」、優先弁済権で「先に返す」。この2つが、日本の仮想通貨取引所における顧客資産保護の柱です。
取引所が倒産した場合の保護の仕組みについて、より詳しくはこちらの記事にまとめています。

NEM事件とFTX破綻で見えた「日本の仮想通貨規制」の実力
法律の条文だけ見ても、いまいち安心できないかもしれません。実際に過去の事件で、日本の規制がどこまで機能したのかを確認します。
2018年のNEM流出で約463億円を補償した実績
2018年1月26日、コインチェックから約580億円相当の暗号資産NEMが不正流出しました。当時としては世界最大規模のハッキング事件です。
このとき、コインチェックは約26万人の顧客に対し、約463億円を日本円で自主補償しています。1NEMあたり88.549円で計算され、保有者全員に返金されました。
注意しておきたいのは、これは「倒産時の法的返還」ではなく「ハッキング被害に対する自主補償」だという点です。法律で返金が保証されたわけではなく、会社が自腹で払った形です。
とはいえ、数百億円規模の補償を実行できたという事実は、コインチェック(およびその後の親会社マネックスグループ)の資金力を示しています。
FTXで海外の顧客は2年以上待たされた
2022年11月、世界第2位の取引所FTXが経営破綻しました。創業者のサム・バンクマン=フリードが顧客資産を私的に流用していたことが発覚し、一瞬で信頼が崩壊した事件です。
海外のFTX顧客は、破産手続きの関係で2年以上資産を引き出せませんでした。約2年後の2024年末からようやく配分が始まった状況です。
一方、日本のFTX Japan(旧Liquid)は状況が違いました。金融庁の分別管理義務が機能しており、日本の顧客は比較的早い段階で出金を再開できています。顧客資産が会社の運営資金と混ざっていなかったことが、大きな差を生みました。
なふと同じFTXグループの破綻でも、日本だけ早く資産が戻ってきたのは印象的です。金融庁登録の取引所を使うことの意味が、この一件でよくわかります。
NEM事件では「自主補償」、FTX事件では「法律の強制力」。どちらのケースでも、日本の利用者は資産を取り戻しています。
それでもコインチェックの倒産リスクがゼロとは言えない理由
ここまで読むと「じゃあ安心」と思うかもしれません。しかし、法的保護があるからといって、リスクが完全にゼロになるわけではありません。正直に書きます。
仮想通貨には「投資者保護基金」がない
証券会社が破綻した場合、日本投資者保護基金が1人あたり上限1,000万円まで補償してくれます。これは分別管理が正しく行われていなかった場合の「最終セーフティネット」です。
しかし、暗号資産にはこの仕組みがありません。分別管理の義務はありますが、万が一それが守られていなかった場合に、第三者が補償してくれる基金は存在しないのです。
もちろん金融庁は定期的に監査を行っており、分別管理が崩れるリスクは低いとされています。それでも「最後の砦」がないことは事実です。
返還まで数ヶ月から数年かかる可能性がある
破綻が起きた場合、まず破産管財人が選任され、資産の確認と配分計画が作られます。この手続きには早くても数ヶ月、場合によっては年単位の時間がかかります。
その間、暗号資産の価格は動き続けます。仮にビットコインを持っていた場合、返還時の価格が購入時より大きく下がっている可能性もあります。逆に上がっている可能性もありますが、「好きなタイミングで売れない」というのは大きなリスクです。
なふと「資産は戻ってくるけど、そのときビットコインがいくらになっているかはわからない」。ここが、法律の保護だけでは解消できない最大の不安材料です。
マネックスグループの経営に左右される部分もある
コインチェックは2018年にマネックスグループに買収され、現在はその傘下で運営されています。2024年12月には米国ナスダックにも上場し、時価総額は約2,700億円に達しました。
上場企業の子会社であるという点は安心材料のひとつですが、逆に言えば、親会社の経営が大幅に悪化すればコインチェック本体にも影響が及ぶ可能性はゼロではありません。
法律で守られている部分と、法律では守りきれない部分がある。その境界を知っておくだけで、不要な不安は減ります。
コインチェックの資産を自分で守るためにできること
法律の保護があるとはいえ、「取引所に全財産を預けたまま放置する」のはおすすめしません。自分でできる対策を2つ紹介します。
長期保有ぶんはハードウェアウォレットに移す
取引所はあくまで「売買の場」であり、「資産の保管庫」ではありません。頻繁にトレードする資金以外は、LedgerやTrezorといったハードウェアウォレットに移すのが最も確実な防衛策です。
ハードウェアウォレットに移した暗号資産は、あなた自身の秘密鍵で管理されます。取引所がどうなろうと関係ありません。
なふと取引所の倒産リスクだけでなく、ハッキングリスクもゼロにできるのがハードウェアウォレットの強みです。長期保有ぶんだけでも移しておく価値はあります。
どのハードウェアウォレットを選べばいいか迷っている方はこちらの記事で比較しています。

1つの取引所に資産を集中させない
コインチェック1社にすべてを預けるのではなく、金融庁登録の複数の取引所に分散するだけでリスクは大幅に下がります。目安として、総資産の50%以上を1つの取引所に置かないことを意識するといいでしょう。
「分散」と「ウォレット移管」のどちらが自分に合うかは、取引の頻度によって変わります。
なふと頻繁にトレードする人は取引所分散、長期でガチホする人はウォレット移管、という使い分けが現実的です。
法律の保護に加えて、自分でもリスクを下げる。「守りの二重構造」を作っておくのが一番安心です。
よくある質問
まとめ
コインチェックが倒産した場合に資産がどうなるのか、法的な保護と残るリスクの両面を見てきました。
- 顧客の現金は日証金信託銀行への金銭信託、暗号資産はコールドウォレットで分別管理されている
- 2020年施行の改正資金決済法で、顧客には他の債権者に優先する「優先弁済権」がある
- NEM事件では約463億円を補償、FTX破綻では日本の顧客が先に資産を回収できた実績がある
- ただし、暗号資産には証券のような投資者保護基金は存在しない
- 長期保有ぶんのハードウェアウォレット移管と、取引所の分散が最も確実な追加防衛策
「コインチェックが潰れたら終わり」ということはありません。法律の保護と、自分でできる対策を組み合わせれば、不安を感じながら使い続ける必要はなくなります。
なふと仕組みを知った上で使い続けるのと、何も知らずに預けっぱなしにするのとでは、同じ「コインチェックを使う」でも意味がまったく違います。
取引所の選び方自体を見直したい方は、こちらの比較記事を参考にしてください。


