仮想通貨の税金について調べると、「2028年に申告分離課税に変わるから、それまで利確しないほうがいい」という情報に行き当たります。
たしかに2025年12月に税制改正大綱が公表され、暗号資産の税率が20.315%へ移行する方針はほぼ確定路線になりました。これだけ聞けば、「じゃあ待てばいいじゃん」と思うのは当然でしょう。
しかし「待てばいい」で本当に得するのは、ごく限られた条件の人だけです。年収や含み益の額によっては、今年のうちに動いたほうが手取りが数十万円単位で変わるケースがあります。
この記事では、年収500万円を基準に利益100万・300万・500万円の3パターンで「現行税額 vs 2028年以降の税額」を計算し、待つべき人・今年動くべき人の判断軸を数字で示します。
仮想通貨の税金はなぜ「高すぎる」と言われるのか
仮想通貨で利益が出ると、それは「雑所得」として給与や事業所得と合算されます。いわゆる総合課税です。所得が増えれば税率が上がる累進課税の仕組みに乗るため、稼げば稼ぐほど持っていかれる割合が大きくなります。
これが「仮想通貨の税金は高すぎる」と言われる根本的な理由であり、株式投資との不公平感の正体でもあります。
最高55%の内訳を年収別で確認する
仮想通貨の利益にかかる税金は「所得税+住民税」の2階建てです。住民税は一律10%、所得税は課税所得に応じて5%〜45%まで段階的に上がります。最高税率は所得税45%+住民税10%=55%になります。
では、実際に年収ごとにどれくらいの税率になるのでしょうか。仮想通貨の利益が100万円だったケースで見ていきましょう。
| 給与年収 | 給与の課税所得(概算) | 仮想通貨利益100万円を加算後の税率帯 | 仮想通貨利益に対する実効税率(所得税+住民税) |
|---|---|---|---|
| 400万円 | 約164万円 | 10%帯(330万円以下) | 約20% |
| 600万円 | 約296万円 | 20%帯(330万円超) | 約30% |
| 800万円 | 約434万円 | 30%帯(695万円超の一部) | 約33% |
年収500万円の会社員が仮想通貨で100万円の利益を出した場合、給与の課税所得は約216万円です。ここに100万円が加算されて課税所得は約316万円となります。この金額だと所得税率は10%帯に収まるため、仮想通貨利益100万円に対する税金は所得税約10万円+住民税10万円=約20万円です。
「最高55%」という数字だけが一人歩きしていますが、年収500万円クラスの会社員なら、利益100万円程度では実効税率20%前後に収まります。
給与所得者の「20万円ルール」に潜む落とし穴
「年間の仮想通貨利益が20万円以下なら確定申告は不要」というルールは有名です。ただし、これは給与所得者が所得税について確定申告しなくてよいという話であり、住民税の申告義務は別に残っています。
住民税は市区町村に申告する必要があります。「20万円以下だから何もしなくていい」と思い込んでいると、自治体から問い合わせが来る可能性があります。
「20万円ルール」の条件と注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。

損失が出ても救済されない現行ルール
現行制度で最も痛いのは、仮想通貨で損失が出ても翌年以降に繰り越せないことです。株式投資なら損失を3年間繰り越して将来の利益と相殺できますが、仮想通貨にはこの仕組みがありません。
さらに、給与所得や事業所得など他の所得と損益通算することもできません。仮想通貨で200万円の損失が出ても、給与にかかる税金は1円も減りません。
同じ「投資で得た利益」なのに、制度の差はここまで大きいです。2028年の税制改正が待ち望まれている理由がよく分かります。
年収500万円×利益額3パターンで「手取り」を比べてみた
「2028年まで待ったほうが得なのか」を判断するには、具体的な数字で比較するのが一番です。ここでは年収500万円の給与所得者を基準に、仮想通貨の利益が100万・300万・500万円の3パターンでシミュレーションします。
なお、給与所得控除・基礎控除・社会保険料控除を反映した課税所得ベースで計算しています。細かい端数は省略していますが、税額の規模感を掴むには十分です。
利益100万円なら現行と改正後でいくら差が出るか
現行制度では、仮想通貨の利益100万円は給与と合算されて課税されます。課税所得は約316万円となり、所得税率は10%帯(330万円以下)に収まります。
- 現行制度の税額: 所得税約10万円+住民税10万円=約20万円
- 改正後(申告分離課税20.315%)の税額: 約20.3万円
- 差額: ほぼゼロ(現行のほうがわずかに安い)
利益100万円のケースでは、現行制度でも改正後でもほとんど税額は変わりません。年収500万円クラスなら仮想通貨利益100万円を足しても所得税率は10%帯にとどまるため、総合課税でも実効税率は約20%です。
なふと利益100万円程度であれば、2028年を待つ理由はほとんどありません。むしろ今年利確しても税負担はほぼ同じです。
利益300万円で「待つ派」と「今年動く派」の差が開き始める
利益が300万円に増えると、状況は変わってきます。課税所得は約516万円となり、所得税率は20%帯(330万円超〜695万円以下)に突入します。
- 現行制度の税額: 所得税約39万円+住民税30万円=約69万円
- 改正後(申告分離課税20.315%)の税額: 約61万円
- 差額: 約8万円(改正後のほうが安い)
約8万円の差が出始めます。「8万円なら待つ価値がある」と思うかもしれません。ただし、この8万円は2年間ポジションを動かさないことが前提です。
2年間で価格が下落して含み益が半分になったら、比較の前提そのものが変わります。逆に利益がさらに増えた場合は改正後の税額差も広がりますが、それは後から見た話であって、今の時点では誰にもわかりません。
「差額が大きいから待つべき」に見える300万円帯こそ、判断が最も難しいゾーンです。
利益500万円は待つだけで本当に得なのか
利益500万円になると、課税所得は約716万円です。所得税率は23%帯(695万円超)に入り、一部は30%帯にもかかります。
- 現行制度の税額: 所得税約80万円+住民税50万円=約130万円
- 改正後(申告分離課税20.315%)の税額: 約102万円
- 差額: 約28万円(改正後のほうが安い)
3パターンを横並びで比較するとこうなります。
| 仮想通貨利益 | 現行制度の税額 | 改正後の税額 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 約20万円 | 約20.3万円 | ほぼゼロ |
| 300万円 | 約69万円 | 約61万円 | 約8万円 |
| 500万円 | 約130万円 | 約102万円 | 約28万円 |
利益500万円で差額は約28万円。金額としては大きいです。しかし28万円を得るために、2年間ポジションを動かせないコストをどう考えるかが重要です。
2022年にビットコインは前年末の高値から約77%下落しました。利益500万円が2年後に200万円まで縮めば、税額差の28万円を上回る損失が発生します。改正後の税率が低くても、課税対象の利益そのものが減っていたら意味がありません。
なふと税率だけ見て判断しても、利益の「額」が2年後に同じである保証はどこにもありません。
仮想通貨の利益にかかる税額の具体的な計算方法は、以下の記事でさらに詳しく解説しています。

「2028年まで待てばいい」が危険な3つの理由
シミュレーションの結果だけ見れば、利益が大きいほど改正後のほうが税額は安くなります。しかし「待てばいい」という結論に飛びつく前に、見落とされがちなリスクを3つ確認しておきましょう。
含み益は2年間で消える可能性がある
仮想通貨の値動きは株式の比ではありません。ビットコインの過去の下落率を振り返ると、2018年は高値から約84%下落、2022年は利上げやFTX破綻などが重なり高値から約77%下落しています。
「2028年まで待つ」とは、この値動きに2年間さらされ続けるということです。今ある含み益500万円が、2年後に200万円になっている可能性は決して低くありません。
税率が55%から20.315%に下がっても、利益が500万円から200万円に減っていたら手取りはこうなります。
- 今年利確(利益500万円×現行税率): 手取り約370万円
- 2028年まで待って利確(利益200万円×改正後税率): 手取り約159万円
税率が下がっても、利益が半分になっていたら手取りも当然減ります。見るべきは「税率」ではなく「最終的な手取り額」です。
金商法改正が前提条件になっている
2025年12月の税制改正大綱で「暗号資産を申告分離課税20.315%に移行する」方針が示されました。2028年1月施行が見込まれています。
ただし、この施行には金融商品取引法(金商法)の改正が前提になっています。暗号資産を金融商品として位置づける法改正が国会で成立しなければ、税制の移行も実現しません。
国会審議のスケジュール次第では、施行時期が2028年より後ろにずれるリスクもゼロではありません。「確定していない制度変更」を前提に、資産を2年間塩漬けにする判断が果たして合理的かどうか、慎重に考える必要があります。
なふと税制改正大綱で方針が示された段階と、法案が国会で成立した段階では、確度がまったく違います。現時点では「ほぼ確定」ではあるものの、「確定」ではありません。
今年使える節税手段を放置するほうがもったいない
「2028年まで待つ」に意識が向くあまり、今年の確定申告で使える節税手段を見逃している人が少なくありません。現行制度でも「損出し」「経費計上」「年末の利益調整」は使えます。
たとえば、保有している通貨の中に含み損30万円のものがあるなら、年末に売って損失を確定させ、すぐに買い戻す「損出し」が有効です。これだけで今年の雑所得を30万円圧縮でき、税率20%なら約6万円の節税になります。
2028年の改正で得られるかもしれない数万円の差額を待つより、今年確実に使える節税手段を実行するほうが合理的なケースは多いです。
「待つ」と「今年動く」は二者択一ではありません。今年できることを今年やった上で、改正後の制度も活用するのがベストです。
今年の確定申告で損をしないための実務チェックリスト
税制改正を待つにしても、今年の確定申告は今年やるしかありません。ここからは、確定申告の要否判断から実際の申告手順までを実務ベースで確認していきます。
確定申告が必要かどうかの判定フロー
仮想通貨の確定申告が必要かどうかは、働き方によって判定基準が異なります。
- 給与所得者(会社員・パート): 仮想通貨を含む雑所得が年間20万円を超えたら確定申告が必要
- 個人事業主・フリーランス: 仮想通貨の利益額に関係なく、事業所得と合わせて確定申告が必要
- 無職・専業主婦(夫): 仮想通貨を含む所得が年間48万円(基礎控除額)を超えたら確定申告が必要
- 給与所得者で利益20万円以下でも、住民税の申告は市区町村に別途必要
- 医療費控除やふるさと納税で確定申告する場合は、20万円以下の雑所得も合算して申告する
取引履歴のダウンロードから損益計算までの手順
確定申告が必要だと分かったら、次は実際の手順です。取引所からデータを取得して損益計算し、申告書に反映するまでの流れを確認しましょう。
利用している取引所のマイページから、年間取引報告書(CSV)をダウンロードします。複数の取引所を使っている場合は、すべての取引所からデータを取得する必要があります。
まだ取引所の口座を持っていない、またはメインの取引所を決めていない場合は、国内大手のコインチェックが取引履歴のダウンロードも分かりやすくておすすめです。
まだ取引所の口座を持っていないなら、初心者におすすめのコインチェックでサクッと開設しておきましょう。
ダウンロードしたCSVを損益計算ツールにインポートします。CryptactやGtaxなどの専用ツールを使えば、総平均法・移動平均法のどちらで計算するかを選ぶだけで年間の損益が自動計算されます。
損益計算ツールが算出した年間損益から、取引手数料などの経費を差し引いた金額が雑所得になります。この金額を確定申告書の「雑所得・その他」欄に記入します。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」またはe-Taxで申告書を作成します。給与所得の源泉徴収票と、STEP 3で確定した雑所得の金額を入力すれば、税額が自動計算されます。
コインチェックの取引履歴ダウンロードから確定申告までの具体的な操作手順は、以下の記事で画面キャプチャ付きで解説しています。

経費として計上できるもの・できないもの
仮想通貨の損益計算では、取引に関連する費用を経費として差し引けます。ただし何でも経費にできるわけではなく、税務署に認められるかどうかはグレーゾーンも存在します。
- 取引所に支払った売買手数料・送金手数料
- 仮想通貨関連の書籍・有料メディアの購読料
- セミナー・勉強会の参加費
- 損益計算ツールの利用料(CryptactやGtaxの有料プランなど)
- 通信費(スマホ代・Wi-Fi代)は仮想通貨取引に使った割合のみ
- PCやタブレットの購入費は取引専用でなければ按分が必要
- 取引に直接関係のない生活費や娯楽費
- 仮想通貨の購入費用そのもの(これは取得原価であり経費ではない)
経費の計上は「やるかやらないか」で税額が変わります。特に取引手数料とツール利用料は忘れずに差し引きましょう。
2028年の税制改正で何が変わるのか
ここまで「今年動くべきかどうか」の判断軸を見てきましたが、2028年の税制改正の中身そのものも正確に把握しておく必要があります。「税率が下がる」以外にも、投資判断に影響する重要な変更点があります。
申告分離課税20.315%への移行で手取りはこう変わる
改正後の仮想通貨利益には、株式と同じ申告分離課税20.315%(所得税15.315%+住民税5%)が適用されます。給与所得と合算されなくなるため、年収が高い人ほど恩恵が大きくなります。
ただし、全員が得するわけではありません。先ほどのシミュレーションで見たとおり、年収500万円で利益100万円程度なら、現行の総合課税でも実効税率は約20%です。年収が低い人や利益が小さい人は、改正後のほうが税率が高くなるケースもあります。
損失繰越控除3年間の解禁が意味すること
改正後は、仮想通貨の損失を3年間繰り越して将来の利益と相殺できるようになります。これは株式投資ではすでに認められている制度であり、仮想通貨にもようやく適用される形です。
たとえば2028年に200万円の損失が出た場合、2029年に150万円の利益が出ても課税対象はゼロです。残りの50万円の損失は2030年に繰り越せます。
暴落の多い仮想通貨市場では、この損失繰越控除の効果は非常に大きいです。現行制度で損失が救済されないことが「高すぎる」と言われる一因だっただけに、この改正のインパクトは税率の引き下げに匹敵します。
なふと個人的には、税率の引き下げよりも損失繰越控除の解禁のほうが実務的なメリットは大きいと思っています。暴落年に税金を払わなくて済むのは精神的にもかなり楽です。
暗号資産同士の交換時に課税されなくなる
現行制度では、BTC(ビットコイン)をETH(イーサリアム)に交換した時点で「利確」扱いになり、BTCの含み益に課税されます。DeFiやNFTの購入でETHに換える場面は多く、意図せず課税イベントが発生してしまうケースが頻発しています。
改正後は、暗号資産同士の交換では課税が繰延べされます。課税されるのは最終的に日本円に換金した時点です。
この変更により、仮想通貨のポートフォリオ組み替えが大幅に自由になります。税金を気にして通貨の入れ替えを躊躇する必要がなくなります。
改正後の制度を含めた仮想通貨の節税対策については、以下の記事で網羅的に解説しています。

よくある質問
まとめ
「2028年まで待てばいい」は、条件次第では正しいですし、条件次第では大きな機会損失になります。重要なのは、自分の年収・利益額・リスク許容度に合わせて判断することです。
- 仮想通貨の利益は雑所得(総合課税)で、現行の最高税率は55%
- 2028年に申告分離課税20.315%へ移行見込み(金商法改正が前提)
- 年収500万円×利益100万円なら、現行でも改正後でも税額はほぼ同じ
- 年収500万円×利益300万円以上なら改正後の税額差は8万〜28万円
- ただし2年間ポジションを塩漬けにする価格変動リスクは見落とされがち
- 今年使える「損出し」「経費計上」は改正を待たずに実行すべき
- 確定申告の要否は年間利益20万円が基準(住民税は別途申告が必要)
- 「待つか動くか」は税率だけでなく、価格変動リスクと節税機会の総合判断
改正後の損失繰越控除や暗号資産同士の交換時の課税繰延は、長期投資家にとって大きなメリットになります。一方で、「税率が下がるまで何もしない」は、今年使える節税機会を捨てていることと同じです。
なふと税制改正の内容を正確に理解した上で、今年やるべきことは今年やる。これが結局いちばん損をしない判断だと思います。
まだ取引所の口座を持っていない方は、まずは口座開設から始めてみてください。以下の記事で手順を解説しています。


