2024年5月、国内取引所DMM Bitcoinから約482億円相当のビットコインが不正流出しました。結果としてDMM Bitcoinはサービスを終了し、顧客の資産はSBI VCトレードへ移管されることになりました。
この事件は、「取引所に預けておけば安全」という常識が完全に崩れた瞬間でした。どれだけ大手であっても、ハッキングや経営破綻のリスクはゼロにはなりません。
自分の仮想通貨を本当に守りたいなら、秘密鍵を自分で管理する「ハードウェアウォレット」を検討すべきです。
この記事では、ハードウェアウォレットの2大ブランドであるLedgerとTrezorを7つの視点で比較し、結局どれを選ぶべきかの結論を出します。
482億円が消えた日 — 取引所に預けっぱなしのリスク
仮想通貨の世界には「Not your keys, not your coins(自分の鍵じゃなければ、自分のコインじゃない)」という有名な格言があります。取引所に仮想通貨を預けている限り、秘密鍵を管理しているのは取引所であって、あなたではありません。
DMM Bitcoinの事件は日本国内だけの話ではなく、過去にはMt.Gox(約470億円)、FTX(数千億円規模)など、海外でも取引所の破綻や流出は繰り返されています。
なふと「大手取引所だから大丈夫」と思っていた人が一番被害を受けています。仮想通貨は自分で守る仕組みを持っておくべきです。
取引所ハッキングの手口や対策について詳しくはこちらの記事でまとめています。
ハードウェアウォレットとは何か
ハードウェアウォレットとは、仮想通貨にアクセスするための秘密鍵をオフラインで管理する物理デバイスです。USBメモリのような見た目のものが多く、取引の署名時にだけPCやスマホに接続して使います。
取引所のウォレットやMetaMaskのようなソフトウェアウォレットは、常時インターネットに接続された「ホットウォレット」に分類されます。便利ですが、マルウェアやフィッシング攻撃に対して脆弱です。
一方でハードウェアウォレットは、秘密鍵が一切インターネットに触れない「コールドウォレット」です。オンライン上のあらゆる攻撃から秘密鍵を物理的に隔離できるのが、ハードウェアウォレット最大の強みです。
ハードウェアウォレットが必要な人、不要な人
ハードウェアウォレットは万人に必須というわけではありません。保有資産額や投資スタイルによって、必要性は変わります。
なふと個人的な目安としては、保有資産が「なくなったら本気で困る金額」を超えたら導入を検討すべきだと思っています。それが50万円の人もいれば100万円の人もいますが、デバイス代の1〜2万円を高いと思うかどうかは資産額次第です。
LedgerとTrezorを7つの視点で比較する
ハードウェアウォレット市場は、事実上Ledger(フランス)とTrezor(チェコ)の2強です。どちらも信頼性の高いブランドですが、設計思想や強みが異なります。
ラインナップと価格帯
| モデル | ブランド | 価格(目安) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Nano S Plus | Ledger | 約$79(約12,000円) | コスパ最強の入門機。USB-C接続 |
| Nano X | Ledger | 約$149(約23,000円) | Bluetooth対応。スマホと連携可能 |
| Flex | Ledger | 約$249(約38,000円) | タッチスクリーン搭載の上位機 |
| Stax | Ledger | 約$399(約61,000円) | E-inkディスプレイ搭載の最上位機 |
| Trezor One | Trezor | 約$59(約9,000円) | 最安モデル。主要通貨に対応 |
| Safe 3 | Trezor | 約$79(約12,000円) | セキュアエレメント搭載の新型 |
| Model T | Trezor | 約$169(約26,000円) | タッチスクリーン。Shamir Backup対応 |
| Safe 5 | Trezor | 約$169(約26,000円) | 最新フラッグシップ。EAL6+セキュアエレメント |
価格帯で見ると、Trezorの方が全体的に手頃です。Ledgerはエントリーモデルの Nano S Plusが約12,000円で購入でき、これが最もコスパの良い選択肢になります。一方でLedgerの上位機種(Flex、Stax)は高額で、デザイン性やディスプレイに価値を感じる人向けです。
対応通貨の幅
対応する仮想通貨の種類では、Ledgerが圧倒的に有利です。Ledgerは5,500種類以上の暗号資産をネイティブサポートしており、NFTの管理にも対応しています。
Trezorの対応通貨はモデルによって大きく異なります。エントリーモデルのTrezor OneはXRPやCardano(ADA)に非対応という制限がありますが、上位機種のSafe 5ではサードパーティ統合を含めると9,000以上のトークンを扱えます。
アルトコインを幅広く保有している人や、NFTの管理もしたい人は、Ledgerを選んでおけば対応通貨で困ることはほぼありません。
セキュリティ設計の違い
セキュリティの面では、LedgerとTrezorは根本的に異なるアプローチを取っています。どちらが「安全」かは、何を重視するかによって答えが変わります。
Ledgerはクレジットカードやパスポートにも使われるセキュアエレメント(SE)チップを搭載しており、物理的なハッキングに対して高い耐性を持っています。ただし、ファームウェアはクローズドソースであり、ユーザーがコードを直接検証することはできません。
Trezorは対照的にオープンソースでファームウェアを公開しており、世界中のセキュリティ研究者がコードを検証できる透明性を持っています。さらに上位モデルではShamir Backupという機能で、リカバリーフレーズを複数のシェアに分割して保管できます。最新のSafe 3以降はEAL6+のセキュアエレメントも搭載されており、物理的セキュリティも強化されています。
なふと「透明性」を重視するならTrezor、「実績と物理的な堅牢性」を重視するならLedger。どちらも十分に安全ですが、考え方の違いで好みが分かれるところです。
使いやすさとモバイル対応
日常的な操作性では、Ledgerの方がやや充実しています。Ledger Liveというアプリでポートフォリオ管理、ステーキング、NFT閲覧、DApps接続まで一元化されており、iOS/Androidの両方に対応しています。
Trezorの管理アプリTrezor Suiteもデスクトップでは非常に使いやすいですが、モバイル対応はブラウザベースにとどまっており、専用アプリはありません。Trezorはセキュリティ上の理由からBluetooth機能を意図的に搭載しておらず、USB接続のみの運用となります。
スマホから手軽に管理したい人にはLedger Nano X(Bluetooth対応)が便利ですが、「余計な無線接続はセキュリティリスク」と考える人にはTrezorのUSBオンリーの設計が合うでしょう。
DeFi・NFTとの連携
DeFiやNFTを扱う人にとって重要なのが、MetaMaskなどのソフトウェアウォレットとの連携です。この点はLedger、TrezorともにMetaMask連携に対応しています。
ただし、DAppsの対応数やNFT管理の利便性ではLedgerが一歩リードしています。Ledger LiveにはNFTギャラリー機能が内蔵されており、Openseaなどを介さずに保有NFTを確認できます。Trezorの場合、NFTの閲覧にはサードパーティのサービスを利用する必要があります。
日本語サポートと購入ルート
Ledgerは公式サイトが日本語に対応しており、日本への直送にも対応しています。Trezorも公式サイトから日本への配送が可能ですが、日本語インターフェースの充実度はLedgerの方が上です。
結局どっちを選べばいいのか
ここまで7つの視点で比較してきましたが、結論を明確にします。
- コスパ重視で初めてのハードウェアウォレットなら → Ledger Nano S Plus
- スマホでも管理したいなら → Ledger Nano X
- オープンソースの透明性を重視するなら → Trezor Safe 5
- とにかく安くコールドウォレットを持ちたいなら → Trezor One
迷ったらLedger Nano S Plusを選んでおけば、まず後悔することはありません。約12,000円で5,500種類以上の通貨に対応し、MetaMask連携もDeFi利用もカバーできる万能モデルです。
なふと僕自身もLedger Nano S Plusを使っていますが、初期設定も10分程度で終わりましたし、MetaMask連携も問題なく動いています。最初の一台としては本当におすすめです。
Ledger・Trezor以外の選択肢
Ledger・Trezorが2強ですが、それ以外にも注目すべきハードウェアウォレットがあります。
Tangem — カード型で最もシンプル
TangemはクレジットカードサイズのNFC対応ハードウェアウォレットです。スマートフォンにかざすだけでトランザクションを署名できる手軽さが特徴で、ボタン操作やケーブル接続が一切不要です。
最大の特徴は、リカバリーフレーズが存在しないこと。カード自体がバックアップの役割を果たし、複数枚のカードセットで冗長性を確保する設計です。「24単語を管理するのが怖い」という初心者には、かなり魅力的な選択肢になります。
CoolWallet — 持ち運び重視のカード型
CoolWalletもカード型のハードウェアウォレットで、Bluetooth接続によるスマートフォン連携が可能です。防水設計で耐久性も高く、財布に入れて持ち歩けるのがメリットです。
ただし、対応通貨やDApps連携の面ではLedger・Trezorに劣る部分もあるため、メインウォレットとしてよりはサブデバイスとしての利用に向いています。
保有資産額別のおすすめ早見表
| 保有資産額 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 10万円以下 | 不要(取引所で十分) | デバイス代の方が割高。まずは投資額を増やすのが先 |
| 10〜100万円 | Trezor OneまたはLedger Nano S Plus | 1万円前後で十分なセキュリティを確保できる |
| 100〜500万円 | Ledger Nano S PlusまたはTrezor Safe 5 | 対応通貨の幅とセキュリティのバランスが重要 |
| 500万円以上 | Ledger Nano X + バックアップ用にもう1台 | 複数デバイスでの分散保管を推奨 |
買う前に知っておくべきリスク
ハードウェアウォレットは「持てば安全」というものではありません。正しく管理しなければ、むしろ資産を失うリスクがあります。
リカバリーフレーズを失うと資産は永久に消える
ハードウェアウォレットの初期設定時に表示される24個の英単語(リカバリーフレーズ)は、デバイスが壊れたり紛失した場合に資産を復元する唯一の手段です。
このフレーズを失うと、デバイスが使えなくなった時点で資産へのアクセスは永久に不可能になります。再発行もできません。
- 紙に書いて、耐火金庫や銀行の貸金庫に保管する
- 絶対にスマホやPCに保存しない(スクリーンショットもNG)
- クラウドストレージ(Google Drive、iCloud等)には絶対にアップしない
- 可能であれば2箇所以上に分散して保管する
ハードウェアウォレットのセキュリティは、リカバリーフレーズの管理がすべてです。デバイスはいつでも買い直せますが、フレーズは二度と取り戻せません。
非正規品を買うと秘密鍵が盗まれる
Amazonマーケットプレイスやメルカリ、ヤフオクなどで販売されているハードウェアウォレットには、改ざんされたデバイスや初期設定済みの中古品が混在しています。
悪意のある出品者が事前にリカバリーフレーズを控えた状態でデバイスを販売し、購入者が仮想通貨を入金した後にフレーズを使って資産を抜き取る — こうした手口は実際に報告されています。
なふと「少しでも安く買いたい」という気持ちはわかりますが、ハードウェアウォレットだけは絶対に公式サイトから買ってください。数千円の差で全資産を失うリスクを負う意味がありません。
仮想通貨の詐欺手口についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。

初期設定を他人に任せてはいけない
「設定がよく分からないから詳しい友人にやってもらった」「買った時点でもう設定されていた」— どちらも危険です。
初期設定は必ず自分で行い、PINコードとリカバリーフレーズは自分だけが知っている状態を保つ必要があります。他人がリカバリーフレーズを知っている場合、その人は理論上いつでもあなたの全資産にアクセスできます。
Ledger公式もTrezor公式も、初期設定を代行するサービスは一切提供していません。「設定代行」を謳っているサービスはすべて詐欺の可能性を疑ってください。
よくある質問
まとめ
仮想通貨のハードウェアウォレットは、取引所に依存しない資産の自己管理を実現するための必須ツールです。DMM Bitcoinの482億円流出事件が示したように、取引所に預けておくだけでは資産は守れません。
- Ledgerは対応通貨の幅広さ、モバイル対応、DeFi/NFT連携で優位
- Trezorはオープンソースの透明性と手頃な価格で優位
- 迷ったらLedger Nano S Plus。コスパと機能のバランスが最も優れている
- リカバリーフレーズの管理が最も重要。紛失すれば資産は永久に消える
- 必ず公式サイトから購入する。非正規品は秘密鍵が盗まれるリスクがある
ソフトウェアウォレットも含めた仮想通貨の保管方法を幅広く知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

なふとハードウェアウォレットの導入は、仮想通貨投資における「保険」のようなものです。事故が起きてからでは遅いので、資産が小さいうちから備えておくことをおすすめします。
最後に、仮想通貨は「増やすこと」よりも「守ること」の方がはるかに難しいです。攻めの投資と同じくらい、守りの管理にも時間をかけてください。


